今の立憲民主党に「高市政権」樹立を止められるか…「野田佳彦」代表が訴える共闘が「理念なき野合」と批判されてしまう理由
立憲民主党の野田佳彦代表は10月12日、横浜市で街頭演説を行った。野田氏は演説で「違いを乗り越えて一致点を見いだす。政治生命を懸けて調整する。野党が連携し、指名選挙で勝ちたい」と聴衆に訴えた。そして15日には野田氏と国民民主党の玉木雄一郎代表、日本維新の会の藤田文武共同代表の3氏による党首会談が行われた。
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【写真】首班指名選挙を控える高市総裁と、“元総理”である野田佳彦代表。“ファーストレディー”として外遊にも同行した野田夫人の素顔も
自民党は7月の参院選で大敗し、10月10日には連立政権のパートナーだった公明党から連立離脱を通告された。
政治とカネの問題に自民党は消極的だったと公明党は国民に理解を求めた。新しく自民党総裁に就任した高市早苗氏の政治信条や理念に対する反発も少なくない。
何よりも国会は空転状態にあり、国民が最も求める物価高対策が全く進んでいない。今の自民党に不満を持つ有権者は相当な数に達するだろう。
ところが、である。自民党を下野させようと強い意欲を示す野田氏に対しても、国民は厳しい評価を下しているようなのだ。
なぜ人気がないはずの自民党に“権力闘争”を挑んで批判の対象になるのか、担当記者が言う。
「Xを見ると国民の不満がよく分かります。《最大の問題は、理念ではなく「反自民」という情念で動いている点》、《自民党を下野させる事だけを目的に連立するってのは、絶対にやってはならない》、《政策も理念も異なる他政党代表に票を集めようというのは、野党支持者からしたらとんでもない裏切りだと思います》……といった批判が次から次へと表示されます。野田氏は国民に有益な政策を実現するために政権交代を訴えているのではなく、自民党を野党に転落させることしか考えていない、と国民は反発しているのです。野党連合の理念や旗印を野田氏は持っていないという指摘だと考えられます」
国民と立民の“近親憎悪”
実際、「野田氏には理念がない」と受け止められても仕方のない発言もあった。冒頭で触れた横浜市での該当演説で「政権交代というのは予算の使い方を変えることにつながる」と聴衆に訴えた。
さらに演説が終わると野田氏は記者団に「十数年に一回の政権奪取のチャンスだ」と力を込めた。だが連立政権で何を実行するのか、野田氏が国民に明確なメッセージを発したとは言いがたい。
これでは「理念や大義名分は二の次。とにかく政権交代が最優先という姿勢は問題だ」と国民が野田氏を批判するのは当然だろう。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は「野田さんは自民党政権を終わらせることを最優先にしていると考えられます。実は私も、その気持ちは分からなくはありません」と言う。
「ただし、手法が正しかったかは問われていいと思います。野田さんは『首班指名で書く名前は野田佳彦でなくても構わない』と呼びかけ、玉木さんの名前で野党を統一してもいい、との考えを明らかにしていました。立民は野党第一党です。『自分たちが譲歩すれば、野党結集に近づくはずだ』という読みがあったのでしょう。しかし、それは甘かったと言えます。なぜなら国民と立民の不和は一種の“近親憎悪”が原因であり、しかも昨日今日に始まった敵対関係ではないからです」
伊藤氏は「昭和の時代、民社党と社会党が対立した歴史を振り返ると、今の国民と立民が対立している理由がよく分かります」と指摘する。
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