5回もメジャー・デビューした歌心りえ、長い“下積み時代”経て30年越しにブレイク! 50代で全国ホールツアー開催までの「軌跡」と「奇跡」

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「失敗しても大丈夫」夢に向かう人へのメッセージ

 さらに、歌心は、『パチスロ 機甲戦記ドラグナー』といったアニソン系の楽曲も10年前に発表しており、その活動の幅広さに驚かされるが、今後は現在のソロ活動と並行してSeptember時代の楽曲を再度聴いてもらいたいと語る。

「Septemberとして’08年にリリースしたカバーアルバムの『FLOWERs』は、全体を通して聴くと、統一感があるのがわかっていただけるかと。また、’05年のオリジナルアルバム『UNO』も、林哲司さん他いろんな作家さんの楽曲があるので、お気に入りを見つけてもらえると嬉しいです。

 この中で一番人気の、第13位にある『before 25』は、松井五郎さんが作詞なさったクリスマスソングで、ストーリーがとても繊細に描かれているんですよ。“雪の中で響いた着信音が、あなたからだったらいいのにな……”と、背中がゾワゾワっとするほど素敵な楽曲なので聴いてみてください! ゆくゆくは、Septemberとしてもライブをしたいなと思っています」

 そして、「松井五郎さんの作品といえば、これも聴いてもらいたい」と、歌心がボーカルで参加した作品を語り出した。

「作詞家の松井五郎さんとピアニストの中村由利子さんが映画音楽を紹介なさっているラジオ番組から生まれた『シネマの星空』(’21年)というアルバム内の11曲を、Rie名義で歌わせていただいているんです。こちらもとってもすばらしいので、どうやって広めていこうかと思っているほど。今のところ、カバー曲をたくさん聴いていただいていますが、今後は過去のものも含め、オリジナル曲も少しずつ紹介していきたいですね~!」

 この『シネマの星空』は、しっとりとしたピアノ演奏と、映画の名シーンをセレクトしたような日本語詞、そして歌心による癒しの歌声が三位一体となった、まさに大人の暮らしに寄り添ったテーマソング集で、筆者からもおすすめしたい。最後に、夢に向かっている人へのメッセージをお願いしてみた。

「同年代の方からは、“子育てを一生懸命やった後、自分の時間を持てるようになったので、以前止めてしまったことをもう一度やってみようと思いました”というお声をいただくんですね。“私の歌を聴いて、奮い立たされました”って。それがとってもありがたいです。

 また、若い人たちは、自分の夢がなかなか描きにくい時代かもしれないけれど、もし何かやりたいことが見つかったならば、行動を起こして形にしてもらえたらと思います。一度ダメならやめてもいいし、それも悪いことではない。“逃げている”なんて思わずに、視点を変えて他の何かにトライしていけば、見える景色も広がっていくと思うんです。失敗しても大丈夫という気持ちで進んでほしい。そういう夢に向かっている人たちの励みになるような歌を、今後も歌い続けたいです」

 歌手人生30年目にして、最大級の活躍をしていること自体がかなり奇跡的だが、彼女が歌い続けてきたことで、過去の作品が突然脚光を浴びたり、彼女と関わりのあった人たちの道が開けたり、さらには私たち聴き手が何かを進めてみようという気持ちになったりと、奇跡の連鎖が起こっていることもまた感慨深い。今後も、真っ直ぐに届く歌声や彼女の心からの笑顔が、更なる奇跡につながっていくことを心から期待している。

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 記事第1弾では「諦めなかった歌手人生」について語ってもらった。

【INFORMATION】
◎アルバム『SONGS』『HEARTS』発売中

*『SONGS』収録曲 ※カッコ内はオリジナル歌手 
1 道化師のソネット(さただまさし)
2 雪の華(中島美嘉)
3 恋人よ(五輪真弓)
4 メロディー(玉置浩二)
5 木蘭の涙(スターダスト☆レビュー)
6 たそがれマイ・ラブ(大橋純子)
7 唇よ、熱く君を語れ(渡辺真知子)
8 絆(橋幸夫)
9 街の灯り(堺正章)
10 つばさ(本田美奈子.)
11 おかあさんのうた(オリジナル)
12 ふたりのバースデー(オリジナル)

*『HEARTS』収録曲 ※カッコ内はオリジナル歌手 
1 翼をください(赤い鳥)
2 愛をこめて花束を(Superfly)
3 言葉にできない(オフコース)
4 雪の華-Strings Edition-(中島美嘉)
5 奏(かなで)(スキマスイッチ)
6 プラネタリウム(大塚 愛)
7 愛のうた(倖田來未)
8 サンサーラ(中孝介)
9 秋桜(山口百恵)
10 Friend(安全地帯)
11 200倍の夢(Letit go)
12 瑠璃色の地球(松田聖子)

◎アルバム発売記念ソロツアー「Sing A Soul」開催中
2025/10/24 宮城県 東京エレクトロンホール宮城
2025/11/11 熊本市民会館シアーズホーム夢ホール 大ホール
2025/11/12 佐賀市文化会館 中ホール
2025/11/14 福岡シンフォニーホール
2025/11/22 秋田県 ほくしか鹿鳴ホール 大ホール
2025/12/2 ロームシアター京都 メインホール
2025/12/14 山口県光市民ホール 大ホール
詳細は特設ページ

【PROFILE】
歌心りえ(うたごころ・りえ)
1973年、栃木県出身。’95年、3人組ユニット Letit go(レティットゴー)のボーカルとしてデビューし、2ndシングル「200倍の夢」はポカリスエットCMソングに起用されオリコン最高15位、累計約20万枚のヒットに。その後、実姉とのユニットCiaoや、ソロ歌手Rie、女性3人組のSeptemberなどで活動し、10年ごろから“歌心りえ”として活動開始。 ’23年、オーディション番組『トロット・ガールズ・ジャパン』のファイナリストに残り、翌’24年韓国で行われた『韓日歌王戦』に出場しYouTubeの再生回数が累計5千万回超となり韓国で大ブレイク。その後、日本でも大きな話題となり、’25年4月には2枚のカバーアルバム『SONGS』『HEARTS』で念願のメジャー・ソロ・デビュー、同時にオリコン週間アルバムTOP30入りを果たす。

臼井孝(うすい・たかし)
人と音楽をつなげたい音楽マーケッター。1968年、京都市生まれ。京都大学大学院理学研究科卒業。総合化学会社、音楽系の広告代理店を経て、'05年に『T2U音楽研究所』を設立し独立。以来、音楽市場やヒットチャートの分析執筆や、プレイリスト「おとラボ」など配信サイトでの選曲、CDの企画や解説を手がける。著書に『記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝』(いそっぷ社)、ラジオ番組『渋谷いきいき倶楽部』(渋谷のラジオ)に出演中。データに愛と情熱を注いで音楽を届けるのがライフワーク。

デイリー新潮編集部

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