「追浜工場はどうなる?」「新車の投入が減ってない?」 苦境下の「日産」は本当に再建できるのか 46歳CEOに直撃してわかった知られざる経営の内幕

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「新しいモデルがなかなか出てこない」?

森永 こうしてお聞きしていると、直近では新型車も積極的に投入しているのだとわかりました。一方、私の周りの日産ファンからは、「新しいモデルがなかなか出てこない」という不満もよく耳にするんです。こういう声に対してエスピノーサCEOはどうお考えですか。

エスピノーサ いま、新車の投入は加速しているところです。先ほどお伝えしたような車種に加えて、今秋投入する新型EVの「リーフ」は700kmというトップクラスの航続距離を誇ります。日米欧に投入しますが、EVの航続距離に不安を感じていた方にも選んでいただけると思っています。

 ほかにも新商品はどんどん出していきます。「Re:Nissan」における新車計画の目玉の一つが次期型「スカイライン」です。ご存じの通り400馬力と、日産にとって“スピード”の象徴で、私も大好きな車です。でも速いのはそれだけではなく、開発期間も大幅に短くしました。新しく30カ月に短縮した開発プロセスを導入し、その第1弾が新型スカイラインとなります。車としての速さと、日産の開発の速さの両方のアイコンになります。これを目にしたら、森永さんの周りのファンの方々にもワクワクしてもらえることを確信しています。

森永 それはぜひ伝えておきたいと思います。日産には、他社よりも熱狂的なファンが多いと感じますが、彼らの心にまた灯がともれば、状況は変わっていきそうですね。

「トランプ関税」とどう向き合うか

森永 とはいえそんなポジティブな試みと並行して、トランプ米大統領による関税政策が、世界の不確実性を大きくしています。日本の自動車産業は15%という税率で落ち着きましたが、北米市場を重視する日産にとって影響は大きいのではないでしょうか。

エスピノーサ 27.5%から15%まで下げられたという点は歓迎しますが、それでも以前よりはずっと高いので、手放しでは喜べません。関税対策として、日本やメキシコからの対米輸出を抑制し、その分米国内での生産台数を増やしています。それに伴い米国でのマーケティングも、関税のかからない車に集中するようにしています。部品の調達先も短期間で変更しました。これらの対策は今後も継続します。現行の15%だって、来月、半年後、来年にはどうなっているか誰もわかりませんからね。そういう不確実性が大きいからこそ、今は自分たちでコントロールできる部分を改善していくしかありません。

森永 日本で発表される貿易や物価の統計を照らし合わせてみると、日本の自動車メーカー全体として、関税分を織り込む形で出荷価格を引き下げ、米国での競争力を維持しようとしていると推察されるデータも見受けられます。

エスピノーサ それは根本的な解決にはなりません。グループ企業間の価格を調整することはできますが、最終的には輸出先の国で関税を支払うことになります。ですから、先に述べたような関税対策は今後も必要になる。幸い、米国の二つの完成車工場も含め、日産にはグローバルな生産拠点網があります。むしろ「広すぎる」とこれまでは問題視されていたところもあったのですが、それがいまは生産体制の柔軟性に繋がっている。関税だけでなく、米中を中心に地政学上の緊張も高まる中、これは我々の強みになっています。

森永 今のような“有事”には、広い生産網が活きているわけですね。

エスピノーサ その通りです。

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