「追浜工場はどうなる?」「新車の投入が減ってない?」 苦境下の「日産」は本当に再建できるのか 46歳CEOに直撃してわかった知られざる経営の内幕

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追浜地区の今後は

森永 やはり一つ目のコスト削減について、どうしても気になってしまいます。特に、神奈川県横須賀市で一つの町を築いていた追浜工場の閉鎖は、日本人の間で大きく注目されていますよね。人員の整理や跡地のプランも含めて、お考えをお聞かせいただけますか。

エスピノーサ 繰り返しになりますが、今回の工場停止や人員削減は、本当に苦しい決断でした。その中で私が最優先で考えているのは「人」です。従業員に対して適切なオプションを提供し、人生や生活に対する影響をなんとか最小限におさえたい。その上で跡地をどうするかは、売却も含めていろいろな選択肢を検討しているところです。地域社会への影響も最小限におさえられるよう、自治体とも相談をしています。社会に責任のある企業市民としての義務を果たしたいと思っています。

 ただ、追浜地区で停止するのは車両生産工場です。追浜地区には総合研究所やテストコース、専用ふ頭などの事業拠点があり、これらの施設は変更なく運営を続けるということは、申し添えておきたい。

森永 なるほど。

エスピノーサ 生産拠点についてはすでに5カ所の統廃合を発表し、残す海外の2拠点は最終調整中です。これらの改革のために8500億円の資金調達もできたので、時間的余裕も得られています。

 こうした苦しい施策こそどんどん前に進めていかなければ、今後新商品を投入しても、“悪いニュース”ばかりが注目されてしまうでしょう。社内外ともに「未来」に向かっていくためにも、やると決めたことにはスピーディに取り組んでいます。

中国で築いた優位性を「外」へ

森永 もう一つ、市場に対するアプローチの仕方を見直すというお話も気になりました。先ほど挙げられた国のほか、たとえばEV市場が過熱する中国ではどのような戦略を描いているのでしょう。

エスピノーサ 中国でも日産のブランドがしっかり認知されていて、たとえば今年4月から販売を開始した新型EVセダン「N7」は、1カ月あたり1万台を超えるペースで売れています。中国は競争の激しい市場ですが、お客様の目線に立って適切な開発を行えば、しっかり成果を得られることが証明できました。逆に言うと、これまではそのような有機的な戦略なしに、短期間で無理に台数を増やそうとしていたからうまくいかなかったわけです。

森永 中国は価格競争が厳しい面も大きいと思います。そこで事業を拡大していくことが、日産の利益率を下げていくということにはなりませんか。

エスピノーサ 私は、中国を単体の市場とはとらえていません。もちろんまずは、無理のない範囲で販売台数を伸ばし、中国での事業を安定させたいと思っています。そのうえで、中国に拠点を持つからこそ実現できる開発スピードやコスト面での強みなどを用いて、「外」で戦いたいのです。中国の自動車メーカーが、その価格競争力やスピード感をもって海外で台頭しているのと同じように、我々も中国で築いた優位性を活用していく。そうして中国で開発する台数が増えれば、為替や市場の変動の両面でヘッジを利かせられるでしょう。また「N7」と同様の手法で開発したEVやPHEVの新エネルギー車を27年夏までに新たに8車種投入予定です。

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