「追浜工場はどうなる?」「新車の投入が減ってない?」 苦境下の「日産」は本当に再建できるのか 46歳CEOに直撃してわかった知られざる経営の内幕
苦渋の選択
森永 ルノー、三菱自動車との3社連合は、まさに世界の首位争いを繰り広げていましたね。トップが手に届く範囲にあったからこそ、そこにこだわってしまったということでしょうか。結果、現在の経営危機に繋がったわけですが、御社が今年5月に発表した経営再建計画「Re:Nissan」に大きな注目が寄せられています。これからどうやって経営を立て直すのか、その柱を教えていただけますか。
エスピノーサ コスト構造の改善、商品戦略の見直し、パートナーシップの強化。この三つを柱に、26年度までに自動車事業を黒字化させることを目標にしています。
一つずつ説明させてください。
まずはコスト構造の改善。固定費と変動費をそれぞれ2500億円ずつ削減することを目指します。特に固定費については、世界全体の生産拠点を17から10に集約させ、人員も2万人削減することを決めました。これは従業員やその家族の生活がかかっているので、痛みを伴う苦渋の選択ですが、避けては通れない決断でした。そして「800万台」を前提にして広がっていたサプライヤーのスリム化や、開発・設計基準の徹底的な見直しなど、ありとあらゆるアプローチで変動費の削減も行っています。
森永 それで合計5000億円のコストを削減すると。
エスピノーサ 二つ目の柱は、商品戦略です。市場へのアプローチの仕方も含め、全面的に見直しを行いました。日本やアメリカのほか、中東、メキシコなど、日産のブランド力が高いコア市場を再定義し、各市場に適切な商品を迅速に展開していきます。日産の中心である日本市場には今秋、新型軽「ルークス」を投入。また10月末から開催されるジャパンモビリティショーでは、アイコンとなる新型車をお披露目します。日産復活のエンジンとなる北米は、既に回復の兆しが見え始めています。ディーラーとの関係をさらに強めていて、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車(PHEV)などの新商品投入も積極化していきます。
そして三つ目は、パートナーシップの強化です。商品ポートフォリオを効率的に補完するため、ルノーや三菱自動車とのアライアンスを中心に、協力体制を敷いています。たとえば欧州市場では、開発も生産もルノーに委託する形式で、新型EVの「マイクラ」を今年投入しました。技術領域では、クルマの知能化やソフトウェア領域などでホンダとの協議も続いていて、また、アメリカでの関税対策などもホンダとの協力体制の可能性を検討しています。
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