「追浜工場はどうなる?」「新車の投入が減ってない?」 苦境下の「日産」は本当に再建できるのか 46歳CEOに直撃してわかった知られざる経営の内幕
世界の「NISSAN」が経営危機に苦しむ中、その再建を任されたのはメキシコ出身の46歳。生産拠点の縮小をはじめ“痛みを伴う決断”を余儀なくされ、「トランプ関税」などの外的要因も先行きに影を落とす。山積みの課題を乗り越え、かつての輝きを取り戻す日は来るのか。経済アナリストの森永康平氏の直撃に、苦境の原因や追浜地区の現状、今後の新車戦略まで、イヴァン・エスピノーサCEOが明かした。
※本稿は週刊新潮2025年10月16日号【経済アナリスト森永康平のビジネスリーダーにドロップキック!】の対談記事です。
森永 CEOに就任されてから半年ほど経ちましたね。今までと生活ぶりは変わりましたか。
エスピノーサ たしかに変わったこともありますが、これまで日産で25年ほど働き、日本にも10年近く暮らしていますから、生活自体の変化はそれほど大きくありません。一方、責任は非常に強く感じています。厳しい状態の中でCEOを引き継ぎ、日産を“あるべき姿”に戻さなければならないという思いが、私を突き動かす原動力になっています。
森永 46歳という若さで大企業を率いるとなると、特に最初は苦労したのでは。
エスピノーサ 私は外からやってきた経営者ではなく、日産という会社については就任前からよく知っています。CEO直下の会議体も信頼するメンバーを選任できましたので、就任してからの移行期間は比較的うまくいったと思っています。でも重要なのは「これから」です。私が人生を捧げてきた日産の明るい未来を、なんとしても切り拓きたいですね。
“台数至上主義”の弊害
森永 日産に対する強い愛が感じられます。しかし2025年3月期に6700億円という巨額損失を出すなど、日産は非常に厳しい状況にあるように思います。この原因はどこにあるとお考えでしょうか。
エスピノーサ もちろん外的要因もありますが、ベースにあるのは、やはり日産が持つ構造的な問題でしょう。以前の経営陣は、「年間800万台」という成長目標の達成に向け、生産能力の増強、大規模投資、人員増など大幅にコストを増やしてきました。しかし生産台数はピーク時でも577万台。近年は350万台ほどにまで減っていますから、固定コストがとても賄いきれない状態だったわけです。
加えて、重要市場である北米を中心に、値引きをしてまでも在庫を整理しようとしたことで、利益率が押し下げられてもいました。北米市場におけるシェアが7.5%程度で推移していたときは利益率も高く、健全な状態だったのですが、そこからブランド力以上にシェアを高めようとしたことは、大きな問題だったと思います。
森永 やはり“台数至上主義”の弊害は大きかったわけですね。前経営陣はどうしてそのような無理な目標にこだわってしまったのでしょう。
エスピノーサ 当時の意思決定の現場にいたわけではないので、「わからない」というのが正直なところです。ただ遠くから見て感じていたのは、ルノーも含むアライアンス全体で、世界ナンバーワンを獲りにいこうという強い思いです。世界トップの台数を達成すれば、それこそがゴールという雰囲気がありました。ですが、ビジネスはそう簡単な話ではありません。お客様にどのような価値を提供するか、社会にどう貢献するか、そういう“存在意義”も含めたバランスが大事だと思うのです。規模や儲けは「結果」でしかなく、ゴールにすべきものではないと私は思っています。
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