「先生となら娘を結婚させてもいい」と迫られて 東大生の家庭教師が担当替えを願い出ることも…知られざる“家庭教師あるある”

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 前回は学習塾を取り巻く様々な問題を紹介したが、今回取り上げたいのは「家庭教師」だ。

 同じ「教える」でも環境が全く違う家庭教師という仕事。かつて筆者も受ける側として、そして仕事をする側として、家庭教師を経験したことがある。今回は、その頃の話に加え、これまで取材してきた7人の家庭教師経験者と、生徒の親3人から聞いた話を織り交ぜて紹介してきたいと思う。

教える側の苦労

 家庭教師はいわずもがな、生徒の家を教師が訪れ、学習をサポートする職業をいう。

 前回の「学習塾」も同じように子どもの学習をサポートする仕事。とりわけ「個別指導学習型の塾」の場合は、家庭教師と教え方にそれほど違いがないように思われるが、それぞれには一長一短がある。

 学習塾に通うメリットとしてよく挙げられるのは、周りがみな勉強をしているため緊張感が生まれやすいこと、また、受験に対する情報量が多いことなどがある。自宅では集中力が途切れがちな子どもには個別指導塾のほうが向いているかもしれない。

 逆にデメリットとしては、他の生徒の進捗が気になったり、通塾のための時間や金銭的コストがかかったりする点がよく指摘される。塾の時間帯によっては、夕食の時間が不規則になったり、栄養バランスも偏りがちになったりするという声もある。

 一方、家庭教師は、慣れた環境で先生を完全に独り占めにしながら勉強できることが何よりのメリットだろう。また、子どもの個性が尊重される昨今において、より専門的な学習をしたい生徒や、障害を抱えていて塾に通えない生徒など、それぞれのニーズに細かく対応できるのも家庭教師の特徴ともいえる。

 デメリットについては追って詳しく挙げていくが、家庭教師の場合、指導を受ける生徒以上に、指導を提供する教師側に大きな影響があるように感じる。

業界を支える大学生

 学習塾同様、家庭教師の多くは学生アルバイトだ。大学受験を経験して間もない彼らは、教え方の要領が多少悪くても、最新の受験事情をよく知っているため需要がある。家庭教師の派遣を行っている各企業の発表を見てみると、アルバイト学生の平均時給は2000円あたりが一般的。

 だが、難関大学に在籍しているとなると、その時給は跳ね上がる。

 派遣会社に籍を置き家庭教師をしていた、ある東大生に話を聞いたところ、初めのうちは、時給は3000円。慣れてくると5000円の案件が紹介されるようになっていったという。

「個人契約で家庭教師をしている理系の同期には、時給7000円、なかには1万円という人も。教え方が上手くて生徒と相性がよければ青天井なのでは」

 このように家庭教師は一般的なアルバイトよりも時給は高くなるが、「あまり効率的には稼げない」という声も少なくない。それは「予習」や「準備」が必要になるからだ。

 大学生ならば小学生の算数くらい簡単に教えられるだろうと思われるかもしれないが、そんなことはない。

「自分では、もう当たり前のことだと思ってしまっていることを、子どもが理解できるように噛み砕いて説明することはかなり難しいんですよね。国語や現代文の読解問題などは、生徒さんの読書量や経験値などが反映されるので特に難しい」

「例えば小学6年生で習う『ツルカメ算』。XやYを用いて連立方程式で解けばそんなに難しくはないんですが、連立方程式は一般的に中学校2年生で習うもの。当然、小学生はこの解き方を習っていないため、より思考力を要するんです。ただ、小学生は思考を使うと集中力が途切れやすい。そんななか経験の浅い大学生が教えるとなれば、やはり準備や予習が必要になります」

 特に大学1年生で家庭教師を始めたての場合などは、大学生活との両立、自分自身の試験やレポート対策もしなければならないので、かなりハードだという。

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