タカイチに李在明がケンカを売れない3つの理由 「極右政権誕生」に歯がみはするけれど――鈴置高史氏が読む
日本は韓国の言うことを聞くしかない
――韓国は日本に逆らえない。どんなにタカイチが不愉快だろうと。
鈴置:そこで韓国は「日本も韓国とは対立できない」との逆宣伝を始めたのです。
韓国・国民大学の李元徳(イ・ウォンドク)教授が朝日新聞のインタビューに答えて以下のように語っています。紙版の「靖国参拝 適切に判断するのでは 韓日対立する余裕ない 協力必要」(10月5日)から引用します。
・韓国にとって最も敏感なのは独島(日本名・竹島)の領有権をめぐる問題だ。さらに靖国神社参拝や慰安婦問題、徴用工問題などの歴史問題で高市氏が強い姿勢に出た場合、韓国側は反発するだろう。
・韓日を取り巻く国際情勢を考えると、両国が対立する余裕はない。トランプ米政権の政策や中国の動き、北朝鮮への対応などを考えた場合、韓日は協力せざるを得ない関係になっている。
李元徳教授は「両国が対立する余裕はない」から「日本は歴史問題で韓国の言うことを聞け」と主張しています。しかし、現実を見れば「対立する余裕はない」のは韓国であって、日本ではない。ここに大いなる誤魔化しがあります。
韓日外交共闘の嘘
――李元徳教授は日本にとって韓国が必要な理由として、米国、中国、北朝鮮との外交をあげています。
鈴置:そこが嘘なのです。その3点で、いかにも日本が韓国の助けが要るかのように語っています。でも、トランプ関税は日米、米韓はそれぞれ別途に協議しました。日韓が組んで米国に当たる、という構図にはなりません。EU(欧州連合)という経済共同体を構成している欧州とは基本的に異なるのです。
対中国もそうです。台湾有事の際の米国との軍事協力を韓国は拒否しています。韓国は「中国側」の国なのです。日韓が米国とスクラムを組んで中国に当たることはない。もう、米国も韓国を同盟国扱いしなくなったではないですか。
北朝鮮の核に関しても李在明政権は日本を騙しています。9月30日の日韓首脳会談で、両国は北朝鮮の完全な非核化を目指すことで合意しました。日本の外務省も、韓国外交部もそう発表しています。
ところが、李在明大統領はBBCのインタビューでは「完全な非核化よりも核開発の凍結を支持する」「非核化は実りのない目標」とはっきりと述べています。左翼政権らしく、従北の本性を見せ始めたのです。
「South Korea would accept a Trump-Kim deal to freeze nuclear programme, president tells BBC」(9月22日)から原文を引用します。
・South Korea's president has said he would agree to a deal between Donald Trump and Kim Jong Un in which North Korea agreed to freeze production of its nuclear weapons, rather than get rid of them.
・"The question is whether we persist with fruitless attempts towards the ultimate goal [of denuclearisation] or we set more realistic goals and achieve some of them," Lee added.
というのに日本では、北朝鮮の非核化に向け日韓が手を携えていける、との大いなる誤解がある。日本経済新聞の社説「日韓は首脳往来を定着させよ」(10月3日)には以下のくだりがあります。
・北朝鮮の金正恩総書記は「核武力による安全保障は絶対不変だ」と核兵器に執着する。トランプ米大統領が金正恩氏との年内の会談に意欲を示すなかで、日韓首脳が北朝鮮の「完全な非核化」に向けた連携を申し合わせたのは米朝双方へのメッセージになる。
この社説を読んだ韓国の外交関係者は「日本はちょろい。もっと騙してやろう」と大笑いしたでしょう。
「タカイチ潰し」で中国頼み?
――結局、李在明政権はどう高市政権に接する?
鈴置:高市政権が竹島や慰安婦で本来の主張を繰り広げないか、恐る恐る見守るしかありません。もちろん、日本を牽制するために李元徳教授式の「日本は韓国と対立する余裕はない」との宣伝を続けると思います。
でも、高市氏はこんな子供だましの宣伝には騙されはしないでしょう。石破氏や朝日新聞のようにワキは甘くない人ですから。
となると、李在明政権に残る手は中国頼みです。韓国各紙は「高市政権」は韓国だけでなく中国とも対立するだろうと期待を込めて書いています。
公明党の斉藤鉄夫代表は自民党総裁に高市氏が決まるや否や、「支持者の間に懸念がある」として連立離脱を示唆しました。自公連立が壊れれば「高市政権」は危うくなります。公明党のこの動きの後ろに中国を感じ取る人も多い。
日本経済新聞の「公明党・創価学会に連立離脱論 自民党新執行部、協議難航の気配」(10月7日)は「斉藤氏が10月6日、国会内で中国の呉江浩駐日大使と面会した。両国関係の安定の重要性を確認した模様」と報じています。
韓国大使も中国大使を見習って「タカイチ潰し」のために国会に押し掛け、公明党のネジを巻くかもしれません。
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