「始めてスキーに行った」「今だにガラケーを使っている」に違和感を覚えるも…実は“間違いではない”漢字表記

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校閲者に漢字表記を強制する権限はない

 当連載第3回「もともと全く意味の異なる「歳」と「才」が、年齢を表すようになった理由」の中で「カッコいい漢字の書き分け」について言及しましたが、先ほど説明したような「編集的な観点」での漢字表記の選択というのはまさに「カッコよさ」「雰囲気」もしくは「見た目」という、感覚的な理由も大きいのではないか、と私は考えます。

 校閲者としては(当然のことながら)原稿の表記を尊重し、明らかな間違いでなければ指摘しない、という姿勢を守るべきでしょう。一般的になじみが薄いと思われる難読表記には、ルビを振るよう提案するのも一理です。

 ともかく、校閲者に漢字表記の間違いを“断定”する権限はありません。どうしても気になるときは、ゲラへの書き方を工夫したり、「辞書名を書く」「この媒体では慣習的にこの表記を使う」など、疑問を出した理由を提示する(もしくは、必要な場合に説明できる)ことが望ましいと言えます。

 また、校閲者は過去に自らが出した校閲疑問を自分で「乗り越え」、時に否定してもいいのです。そうでないと、キャリアを積む意味がありません。最初から完璧な校閲者などいないのですから。

 ……全編に“渡って”エラソーな口調になってしまいましたが、なにとぞお許しください。

甲谷允人(こうや・まさと Masato Kouya)
1987年、北海道増毛町生まれ。札幌北高校、東京大学文学部倫理学科卒業。朝日新聞東京本社販売局を経て、2011年新潮社入社。校閲部員として月刊誌や単行本、新潮新書等を担当。新潮社「本の学校」オンライン講座講師も務める。

デイリー新潮編集部

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