「古墳を自分の墓にできる」 前方後円墳墓に問い合わせ殺到のワケ 意外に安い初期費用は?
すでに「墓じまい」が人口に膾炙して久しい。だが遠くの墓をただ近くに移せばすむというものでもあるまい。寺との付き合い、管理、次代の承継者など、問題は依然残る。これらを一挙に解決できそうなのが「前方後円墳墓」だ。果たして問い合わせが殺到している。【上條昌史/ノンフィクション・ライター】
***
【写真を見る】「教科書で見たような古墳を墓にできる?」 64万円だが完成度の高い古墳墓
千葉県野田市、東武アーバンパークライン・愛宕(あたご)駅から車でおよそ7分。田園風景の中にたたずむ霊園「野田ほたるローズガーデン」には、水濠に囲まれた前方後円墳がある。石垣の上に築かれた墳丘は4段構成で、全長17.5メートル、幅13メートル。丁寧に手入れされた芝生が墳丘全体を覆い、古墳の手前には石造りの鳥居と祭壇が設けられている。
今年春に竣工したばかりだが、購入者はすでに100人を超え、購入を検討する登録者も全国で6000人を上回るなど、予想以上の人気を集めている。
販売するのは、明治天皇の玄孫で作家でもある竹田恒泰氏が設立した「株式会社前方後円墳」。竹田氏はなぜ今の時代に古墳墓を造ろうと考えたのか。
「私にとって古墳墓は特別なものではありません。父方の墓がもともと神式の墳墓(上円下方墳)で、幼い頃から自然にお墓参りをしていました。ただ、父は三男で敷地がなく、新たに墳墓を探す必要がありました。ところが墳墓そのものの販売はほとんどなく“それなら自分で古墳墓を造るしかない”と思ったのです。友人に話すと“うちも古墳墓がいいな”という声が多く、意外と需要があることに気付きました。それが会社を立ち上げたきっかけです」
「古墳墓」は樹木葬の一種である。樹木葬とは、墓石の代わりに樹木や草花を墓標として遺骨を埋葬する形式で、承継者を必要としない永代供養が基本となる。一般墓に比べて費用を抑えられ、自然に還りたいという願いもかなえられるのが魅力だ。
古墳は「特別な人だけの墓ではない」
日本最大級のお墓情報サイト「いいお墓」(鎌倉新書)が2025年1月に実施した「第16回お墓の消費者全国実態調査」によれば、同サイトを通じてお墓を購入した人のうち48.5%が樹木葬を選び、一般墓は17.0%、納骨堂は16.1%だった。少子高齢化による“墓じまい”などを背景に、日本のお墓の主流は樹木葬へと移りつつある。
樹木葬にはさまざまなスタイルがあるが、その中でも古墳墓はユニークな存在だ。古墳と聞くと、天皇や豪族といった位の高い人物が眠る墓を思い浮かべる人も多いだろう。だが実際には違う。
「古墳は、仏教が伝来する以前から続く日本固有の埋葬スタイルであり、日本人にとって最もしっくりくる樹木葬の形だと考えています。特別な人だけの墓ではなく、古墳時代には、全国で10万基以上が造られたといわれています。古墳の広がりは大和国家(ヤマト王権)の成立とともにあり、日本民族統合の象徴ともいえます。私たちが参考にしたのは3世紀初頭に出現した前方後円墳で、上から見ると鍵穴のような形をしており、弧と直線が織りなす造形美が特徴です」(竹田氏)
竹田氏の会社が販売する古墳墓は、天皇陵のように1人だけが葬られているものではない。野田ほたるローズガーデンの古墳墓の場合、1人用の永代祭祀(さいし)墓が438区画、2人用が1338区画、さらに複数の遺骨を納める合祀墓も設けられている。
遺骨は宮内庁御用達の有田焼ブランド「深川製磁」の骨壺に納められ、契約した区画の地下に安置される仕組みだ。檀家になる必要はなく、承継者も不要。宗旨・宗派を問わず、神道の祭祀にも仏教の法要にも対応できる。
[1/5ページ]



