「古墳を自分の墓にできる」 前方後円墳墓に問い合わせ殺到のワケ 意外に安い初期費用は?

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寺院激減の中で

 さらに、現代の古墳墓は石塔墓より圧倒的に造成コストが低く、施工も容易であるため、運営側にとって合理的だという。盛り土構造にすることで大規模でも費用を抑えられ、デザイン性も高く維持しやすい。それが利用者にとって価格的なメリットにつながり、「低価格で美しいお墓に入りたい」という需要に応える形となっている。

「竹田氏が始めた“古墳同窓会”は非常に面白い試みです。契約者たちが事前に交流を深める場であり、お寺の檀家や神社の氏子のような“墓を支える共同体”の現代的再解釈ともいえます。地域を越えたコミュニティーの創出に成功している点で、新しい共同体のモデルになり得るでしょう」(鵜飼氏)

 一方で、寺院は厳しい局面に立たされている。全国に約7万7000ある寺のうち、すでに1万7000が「空き寺」(住職不在)で、2040~50年には住職のいる寺が4万台にまで減少すると予測されている。

「寺院の存続が厳しいのは宗教心の衰退ではなく、人口減少と人手不足という構造的問題に過ぎません。むしろ日本人の宗教性は非常に強い。初詣から節分、お盆、墓参りに至るまで、宗教的行為は生活に深く組み込まれています。ただ、宗教を公言することに抵抗感があるため、無宗教と答える人が多いだけで、その実態は宗教的生活に浸っている。つまり、寺が減っても宗教性が失われるわけではない。弔いの方法や形態が変化する中で、古墳型永代供養墓のような新しいスタイルが登場するのは自然な流れなのです。宗教性、美意識、経済性、コミュニティー性を融合させた古墳墓は、今後新しい文化として定着していく可能性があると考えています」(同)

“死ぬのが楽しみになってきた”

 古墳墓は、日本古来の祈りの形を現代に生かしながら、人々に安心感とつながりをもたらす新しい弔いのスタイルである。単なるお墓ではなく、日本人の精神や美意識を映し出す文化的な装置ともいえる。まだユニークな存在ではあるが、今後は時代の変化に対応しながら、古代からの祈りを現代に伝える重要な役割を担っていくのかもしれない。

「この事業を立ち上げて以来、“死ぬのが楽しみになってきた”という言葉を頂くようになりました」と語る竹田氏。死から目を背けるのではなく、死と向き合って「どう死ぬか」を考える。それが残りの人生を「どう生きるか」につながっていく。

「古墳墓は、安心を得る場所であると同時に、“生きる力”を与える場にもなると考えています」(同)

上條昌史(かみじょうまさし)
ノンフィクション・ライター。1961年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部中退。編集プロダクションを経てフリーに。事件、政治、ビジネスなど幅広い分野で執筆活動を行う。共著に『殺人者はそこにいる』など。

週刊新潮 2025年10月2日号掲載

特別読物「1人用64万円弱 初期費用込み、管理費ナシ…現代版『前方後円墳墓』はニッポンの葬送を変えるか」より

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