息子夫婦に「レス問題」が発覚 このままでは孫が…63歳夫が走ってしまった“許されない解決策”
【前後編の後編/前編を読む】「おねえちゃん浮気してる」ワンオペ育児の完璧パパに義妹からの密告 家庭を守りたい夫の“悲しき計算”とは
曽川哲朗さん(63歳・仮名=以下同)は、東京に疲れて26歳の時に地元に帰り、ルミさんと結婚した。彼女の実家が営む商店で共働きをしつつ、息子と2人の娘に恵まれた。 “主夫”のように哲朗さんは積極的に育児を担い、田舎の閉鎖的な空気の中で「いろいろ言われた」ともいうが、それでも妻と共に家庭を築いていった。だが40代に入ったころ、ルミさんの浮気が発覚。哲朗さんは家庭を維持するため、子供たちのため、知らぬ存ぜぬの「寛容」を装った。
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【前編を読む】「おねえちゃん浮気してる」ワンオペ育児の完璧パパに義妹からの密告 家庭を守りたい夫の“悲しき計算”とは
その後、息子は東京の大学に進学、長女も次女もそれに続いた。
「本当にお金がかかったけど、子どもたちが自分の人生を歩んでくれればそれでいい。商売はいずれ人に譲ってもいいと僕は考えていました。でもルミはそうは思っていなかった。『長男に継がせる』と強硬でしたね」
夫婦が直面した、初めてといっていいくらいの大きな“もめごと”だった。親が子どもの人生を決めてはいけない。息子に「継いでほしいとは言うな」と哲朗さんはルミさんに言った。
大学を卒業後、息子は東京で就職、ルミさんの希望は打ち砕かれたが、それでも諦めてはいなかったようだ。
「もちろん計画したことではないんですが、50代半ばになってルミの体調に異変がありました。本人は更年期だと片づけたがっていた。でもなんだか気になるので、大きな病院で検査してもらったら、食道がんだった。彼女は本当にいつも元気で健康だけが自慢だと言っていたくらいだから、本人がものすごくショックだったようで、すっかり落ち込んでしまって。隠してもおけないから子どもたちには本当のことを話しました」
その後…
抗がん剤、手術、放射線療法といわゆるがん治療のフルコースを経ていく中、心配した長女が仕事を辞めて帰ってきた。仕事は辞めるなと哲朗さんは言い続けていたのに、「心配でどうしようもないから」と長女は泣いた。
「長女は看護師だったので、こちらでも仕事はできると。やはり病気のことがわかっている長女が帰ってきたのは、妻も僕も心強くはありました。すると次いで息子が僕も帰ると言い出した。それはダメだと強く言ったんですが、結局、辞めて戻ってきました」
次女は我が道を行くと東京で仕事を続けてはいたが、折に触れて顔を見せるようになった。誰もがルミさんを大事に思っていたのだ。
「数年かかりましたが、ルミは徐々によくなっていきました。僕と息子とで仕事を続け、ルミのことは長女がしっかり見てくれた。手術後も、まだ入院していたほうがいいと言われたけど、ルミは帰ると無理矢理退院しました。でも長女がいたから病院とも適切にコンタクトをとってくれた。自宅に戻ったルミは病院にいるときより、明らかに元気そうでした」
それをきっかけに息子はルミさんから仕事について毎日、手ほどきを受けていた。3年後、29歳になった息子はルミさんの後継者となった。もちろん、元気になったルミさんが「引退する」ことなどあり得ない。それからは息子と妻の二人三脚で商売を続けている。
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