「中居氏問題」で『ワンピース』『スラムダンク』制作会社株にも手をつけ フジテレビがいまだすっきりできない
「W村上」のプレッシャーに
「実際、昨年大きな騒ぎとなった紅麹サプリ問題では、小林製薬は純利益が半減し127億円の損失を計上しましたが、会社側は旧経営陣に対する損害賠償請求を起こそうとはしませんでした。
そこで、大株主である香港系ファンドのオアシス・マネジメントが2025年4月、創業家の小林一雅元会長とその息子の小林章浩元社長や元社外取締役の伊藤邦雄・一橋大名誉教授らを相手取って、135億円を請求する株主代表訴訟を提訴しています。
フジテレビの場合、総務省を怒らせたことも大きいでしょう。村上誠一郎総務相がこの4月、『放送に対する国民の信頼を失墜させた』といった異例の厳しい表現で行政指導を行なっています。監督官庁である総務省に改革姿勢を示す意味でも、50億円訴訟に踏み切ったのです」(同)
旧村上ファンドと村上総務相、いわば「W村上」のプレッシャーに直面したフジテレビとしては、なりふり構わず過去と決別する改革姿勢を示す必要があったということか。とすると、気になるのは、50億円訴訟の行方だ。
驚きの展開も想定
企業がかつてのトップらを訴えるのは、もはや珍しいことではない。
「2020年10月には、オリンパスの粉飾決算事件をめぐって、菊川剛元社長ら3人の旧経営陣に対する594億円の賠償命令が最高裁で確定しました。近年では、必ずしも被告の財産状況・支払能力を勘案しないで、経営責任を問う厳しい判決を下す例が相次いでいます。フジテレビの元社長・専務は、オリンパス事件と違って、直接的に違法行為に関与した訳ではありません。しかし、民放はスポンサー企業からの信用があってこそのビジネス。人権感覚が希薄なまま稚拙な対応を取った結果、CMスポンサー企業の撤退が相次ぎ放送収入が激減、会社に損害を与えたと認定されれば、巨額の損害賠償責任が認められる可能性もあるでしょう」(企業法務に詳しい弁護士)
さらに、驚きの展開も想定できるという。
「港元社長や大多元専務は、事件を『男女間の個人的な問題』と過小評価して初期対応を誤った訳ですが、事件の詳細やフジの会社としての対応等については、第三者委員会報告書の指摘と中居氏側代理人の反論とで食い違っている部分が多くあります。これらの事実関係は、経営陣の善管注意義務違反を認定する上で重要な争点になります」
和解で終わるとの見立ても
企業法務に詳しい弁護士が続ける。
「訴訟の展開次第では、港元社長・大多元専務側が反撃に転じ、あるいはフジテレビ側が主張を固めるために、当事者である中居正広氏や、性暴力の被害を受けた元局アナを『証人』として申請する事態にもなるかもしれません」
そうなると、フジテレビの屋台骨を揺るがした性加害事件の真相をめぐる「ブラックボックス」が遂に開かれることにもなる。しかし一方で、両者が手打ちして「裁判上の和解」で終わるという見立てもある。はてさてどうなるか。
国際コンプライアンスに詳しい北島純・社会構想大学院大学教授に聞くと、
「放送局が関わった性加害のケースとしてはこれまで、米FOXニュースCEOのロジャー・エイルズが同局のアナウンサーやキャスターにセクハラを迫った事例や、英BBCに出演する著名タレントであるジミー・サビルが番組出演者の少年少女らに対して性加害を加えていた事例があります」
としたうえで、こう続ける。
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