なぜメニューの表紙が“素人のおじさん”なのか? 激安メニューで大人気「一軒め酒場」が酒好きのハートを鷲掴みにする理由

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1年に113回、通っていた!

「一軒め酒場」から、メニュー表紙に使用したいとの連絡を受けたときは、

「うれしかったですよ~。だって、以前から『一軒め酒場』の大ファンでしたから。中野に住んでいるもんで、中野北口店は、しょっちゅう行ってます。コロナ禍の間も、連日、夜8時ギリギリまでいました。実家の大阪へ帰った時は、十三店やお初天神店に通ってます。いまでも年に100回は下りません。昨年など、『一軒め酒場』のレシートを数えたら、113枚ありましたから」

 なんと! 3日に1回は、「一軒め酒場」へ行っている計算になる。まさに出会うべくして出会ったとしかいいようがない。

 104人のなかには、すでに故人となったおじさんも何人かいる。

「そういう方は、みなさん、遺影にしてくださっているようです」

 最近は、オケタニ教授のもとへは、おじさんよりも、女性からの撮影希望が多いそうだ。

「みなさん、婚活用です。おじさんがこんなに可愛らしく撮ってもらえるなら、わたしも……というわけです。ふつうの女性は、プロ・カメラマンの知り合いはいないし、かといって、写真館だと、むかしながらのお見合い写真みたいになっちゃうじゃないですか。どなたも『夜景おじさん』のように撮ってほしいと言われます」

「一軒め酒場」のメニューは、3月と10月に新しくなる。もちろんメニュー冊子の表紙も、変わる。すでに次の“10月改変”は準備や仕込みも終わっているそうだ。

 残念ながら、毎年開催してきたオケタニ教授の個展は、今年は諸事情で開催できなかった。

「でもいいんです。『一軒め酒場』のメニュー表紙にしてもらうことで、1年中、全国51店舗で個展を開催していただいているようなものですから」

 10月――今度は、どんな「夜景おじさん」が登場するのだろうか。

森重良太(もりしげ・りょうた)
1958年生まれ。週刊新潮記者を皮切りに、新潮社で42年間、編集者をつとめ、現在はフリー。音楽ライター・富樫鉄火としても活躍中。

デイリー新潮編集部

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