なぜメニューの表紙が“素人のおじさん”なのか? 激安メニューで大人気「一軒め酒場」が酒好きのハートを鷲掴みにする理由

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「撮影前日、散髪に行かないでほしい」

 そこで、いよいよ、オケタニ教授の登場である。いったい、このひと、何者なのか?

「一応、プロフィールには、俳優・司会業などをあげていますが、まあ、フリーランスですよ」

 1973年、大阪生まれ。関西大学を中退して、上京した。当初の芸名は「オケタニイクロウ」だった。ポッドキャストは、かなり早い時期から取り組んできた。

 写真を撮り始めたのは、2017年ころだった。

「最初は、夜景をバックにした女性の写真を撮りたかったんです。そのあと、呑みにも行けますしね(笑)。しかし、夜景をきれいに撮るには、ライティングもふくめ、それなりの技術が必要です。そこで、知り合いのおじさんに来てもらって、練習の撮影を何回かしたんです」

 美しい夜景におじさんは似つかわしくない――と思っていたのだが、出来上ってみると、不思議な味わいがあった。

「これはリアルで、面白い作品になりそうだと思い、次々と知り合いのおじさんに来てもらい、『夜景おじさん』シリーズを撮り始めました。2018年以降は、年に1回、それらを集めた個展を開催し、写真集にもまとめてきました」

 要するに、あのおじさんたちは、オケタニ教授の知り合いで、ふつうの一般人なのだ。現在までに撮影したおじさんは104人。そのうち90人は知り合いで、のこりは紹介や、サイトを見て自ら撮影を希望してきたひとたちだ(有料で、一般からの撮影希望も受け入れている)。

「夜景なんて、どこにでもあると思いがちですが、おじさん+夜景となると、けっこうむずかしいんですよ」

 撮影には、それなりの苦労もあるようだ。

「まず、周囲に人がいなくて夜景が美しい場所を探さなければなりません。というのも、おじさんは、人に見られると、恥ずかしがって調子が出ないんですよ。そこで、どんどん、人がいない、暗いところへ入りこんでの撮影となります。しかし、あまり奥へ行くと、今度は夜景が見えません。なんとか遠くに夜景があって、それでいて、人のいない場所を探すのは、意外とたいへんなんです」

 撮影前日には、散髪に行かないように頼んでいるという。

「散髪に行って小ぎれいになっちゃうと、おじさんらしさが半減しちゃうんですよ。ボサボサ髪のままでいいんです。だけど、どうしても、前日に散髪する人が多いんですね。ファインダーをのぞくと、すぐにわかります。でもまあ、それもおじさんの可愛らしさかなと思っています」

 撮影後のレタッチ(修正)は、なるべくしていない。

「これが女性の写真だったら、シワやほうれい線をレタッチするでしょうが、おじさんの場合は逆です。できれば、ほうれい線を増やしたいくらいですよ(笑)」

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