渋谷区ホテルの8割が“ワンルーム化”の異常事態 マンション内を宿泊客がウロウロ…地元経営者はトラブルを懸念
“ホテル営業権付き”に早変わりさせるスキームも
そうしたA氏の心配をよそに、不動産業界は“ワンルームホテル”に「ビジネスチャンス」を見出しつつあるという。
「もとは家賃が月額10万円のワンルームマンションを、1泊3万円で20日間埋めることができれば60万円になるわけです。そうすると月払いで、賃貸の6倍も“家賃収入”を得られる。仮に30日間満室で回せれば9倍の90万円です」(A氏)
つまり、賃貸マンションの利回りが一気に跳ね上がるのである。
「例えば、家賃が10万円で年間120万円の家賃収入を得られるワンルームを、3000万円で売却した場合、表面利回りは4%となります。実際は諸経費などかかりますが、単純計算では10年間で1200万円の家賃収入が得られ、25年間で元が取れることになります」(同)
ところが、同じワンルームを宿泊施設として届け出を出し、“ホテル営業権付き”の物件として売り出すと――。
「1泊3万円で月に30日間貸し出し月90万円、年間1080万円の売り上げが立つとすると、1億円でその物件を売ったとしても、表面利回りは10%になります。つまり、元は3000万円でしか売れなかったワンルームマンションを、ホテル営業権付きの利回り10%の物件として売り出してしまうのです。すると、詳しい事情を知らない中国人投資家などが、“毎年1000万回収できる物件だったら買おう”なんていうケースが実際に出てきているんです」(同)
仮に売れなくても、ホテル営業を続ければ売り上げは立つので、“在庫”を抱える心配もない。
「“ワンルームホテル”を手掛ける業者は、同じ物件内に複数の部屋を所有していても、1部屋ずつ別名義の法人として登記するケースも目立ちます。それは、5部屋とか6部屋でまとめてホテルの許可取りをすると“バラ売り”ができないからです。逆に1部屋ごとに許可が取れていれば、部屋ごとにその法人の所有権を変更することで売却が可能になり、譲渡所得税の節税も可能となります」(同)
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では、いったいなぜこのような“野放図”とも言える状況が生まれてしまったのか。この記事の後編では、東京オリンピックに向けホテル不足が懸案事項だった2018年頃、なし崩し的に進んだ規制緩和が生んだ「制度の穴」や、予定されていた制度の「見直し」が果たされなかった理由など。“ワンルームホテル爆増”の背景を法律の側面から深掘りしていく――。
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