渋谷区ホテルの8割が“ワンルーム化”の異常事態 マンション内を宿泊客がウロウロ…地元経営者はトラブルを懸念

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 ある週末、渋谷・道玄坂の歓楽街を、巨大なスーツケースをゴロゴロとさせながらさまよう外国人の家族連れ。チェックインするホテルを探しているうち迷ったのだろうか。様子を窺っていると、家族連れが入っていったのは、通りから1本入った場所にある分譲マンションのエントランスだった――。いま渋谷ではこうした光景が珍しくないという。「実は、マンションをホテルとして貸し出す業者が急増しているのです」そう話すのは渋谷で3年以上ホテル経営をしてきたA氏だ。詳しく話を聞いてみると、驚きの実態が――。

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1軒のマンションの中に、25軒のホテルが

「これを見てください」

 A氏がそう言って持ってきたのは「旅館業施設リスト」と印字された20ページ超の資料である。

「渋谷区の保健所が『旅館ホテル営業』の許可を出している施設のリストです。特別な内部資料などではなく、渋谷区保健所のホームページから誰でも入手できるものです」(A氏)

 記載されている宿泊施設の数は、NO.1からNO.460まで。

「実はこのうち5軒のホテルは廃業していて、実際に営業中のホテルは455軒ということになるのですが、一般的な社会通念で“ホテル”と認識されている、受付カウンターがあってロビーがあって、というホテルはこのうち95軒だけで、残り360軒はマンションの1室をホテルとして届け出た、“ワンルームホテル”なのです」(同)

 率にして約8割がマンションの1室をホテルとして営業する宿泊施設ということになるが、驚くのは同じマンションの中に複数の別の宿泊施設が存在していることだ。

 A氏が例として挙げたのは、道玄坂近くの百軒店(ひゃっけんだな)エリアにある総戸数115のマンションだ。

「この1軒のマンションの中に、25軒ほどのホテルが入っていることになっているんですよ。それぞれの部屋が1軒のホテルとして、1つ1つバラバラに営業許可が下りているということです」(同)

 記載されているホテル名を検索してみると、ちゃんとbooking.comなど大手宿泊サイトに登録されているホテルもある。

「三ツ星ホテルとして登録されているホテルもありました。こうした“ホテル”の相場は1泊3万円ぐらいで、ダブルベッド1つにソファベッドがついていて、最大3人泊まれます、というパターンが多い。そうすると、1人あたりの宿泊代は1万円ぐらい。通常のホテルよりも安いということで、低予算の外国人旅行者から人気になっているのです」(同)

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