渋谷区ホテルの8割が“ワンルーム化”の異常事態 マンション内を宿泊客がウロウロ…地元経営者はトラブルを懸念

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通常のホテルには備わっている防火性能も…

「断っておきたいのですが、私は決して“商売敵”だからこんな風に言うのではないんですよ」

 そのように前置きしたうえで、A氏が懸念するのは“ワンルームホテル”の「安全性」だ。

「まず気になるのは防火設備です。通常、ホテルは火事が起きても他の部屋に火が燃え広がらないよう、特殊な建材を使って建設します。“特殊建築物”というのですが、マンションの1室をホテルとして届け出ている場合、そうした基準をちゃんと満たしていない可能性が高い」(A氏)

 気がかりなのは、行政の連携が取れていないように見える点だ。

「管轄の消防署の方とお話しする機会があったので、そういったホテルが増えていることを知っていますか、と聞いてみたのです。すると“え、そんなにたくさんあるんですか”と驚いていました。つまり、保健所の営業許可施設リストが消防署に共有されていないのだと思うのです」(同)

 消防の担当者が言うには、査察対象の施設はスケジュールが決まっていて、順番に回っていくとの説明だったというが、

「360軒の“ワンルームホテル”を1つ1つ確認することができるのか。人手の問題もあり実際は難しいのではないでしょうか」(同)

ドラッグや売春など犯罪の温床になる恐れ

 A氏がもう1つ危惧するのは、“ワンルームホテル”が犯罪の温床になる可能性である。

「マンションの1室をホテルにした宿泊施設には、フロントがありません。インターネットで予約を受け付けて、決済は事前にネット上で完結するため、対面のやり取りが発生しません。部屋の鍵も、部屋のポストに暗証番号付きのケースがぶら下がっていて、決済後に伝えられる番号を入力することで鍵を取り出せる、という場合がほとんどです」(A氏)

 オートロックのマンションの場合、部屋の前まで辿り着くためにはエントランスの暗証番号が必要になるが――。

「そのために本来は住人しか知らないセキュリティドアの暗証番号を、宿泊客に教えてしまうケースも多い。そうするとスーツケースをガラガラと引いた外国人が、マンションのエントランスの中を平然と歩くことになる。マナーのいい外国人ばかりであればいいのでしょうが、中には深夜に酒を飲んで騒ぎながら帰ってきたり、ゴミなどを共用部に置いたままにしたりしてしまう旅行者もいると聞きます」(同)

 ゴミ出しや騒音のトラブルも困るが、怖いのは犯罪に使われてしまうケースだ。

「例えば、インターネット上では3名の定員の部屋として貸し出されていたとしても、実際に何人泊まっているかは確認しようがありません。その気になれば8人でも10人でも部屋に入れてしまいますし、宿泊客でない人を招き入れることも容易です。そういう環境は、やはり犯罪の温床になりやすく、例えば麻薬の売買に使われたり、犯罪組織の隠れ家になってしまったり、さらには売春などの現場として使われてしまう恐れもあります」(同)

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