夜の路上で“赤ん坊を抱いたあざだらけの女性”を助けたら…45歳夫が「DV被害妻」と続ける奇妙な関係

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【前後編の後編/前編を読む】保護猫は愛せるけれど「我が子はちょっと…」な45歳夫 妻からの“離婚して”にも驚きの対応

 津島賢哉さん(45歳・仮名=以下同)は、25歳のときに学生時代の恋人・真知さんと、不本意な形で“できちゃった結婚”をした。だが、子どもへの関心を持てないまま別居し、養育費だけを送り続けた。妻子と向き合えない後悔を抱きつつも、「子どもも愛してくれる人と出会ったので離婚してほしい」という真知さんからの言葉は無視。送られてきた離婚届も捨て、転職・転居して姿を消した。そんな彼が、やがて過去と向き合わざるを得ない“きっかけ”を迎える。

 ***

 39歳のときだった。夜更けに最寄り駅から自宅への道を歩いていると、建物と建物の間の小さな路地にうずくまっている人がいた。女性のようだった。

「一瞬、何だろうと思いましたが、女性がこちらに頭を下げるようにしてうずくまっている。知らん顔もできず、『どうしました? 具合が悪いなら救急車を呼びましょうか?』と問いかけると、彼女がゆっくりと顔を上げた。顔はあざだらけで、しかも腕にはしっかりと赤ん坊を抱いている。驚きましたよ。すると彼女、『誰も来ていませんか?』って。怯えていた。夫からDVを受けて逃げ出してきたそうです。とりあえず警察に行こうと言うと、警察には行きたくないと」

自分の子を思いだして

 賢哉さんの住んでいる賃貸マンションはすぐそばだった。うちに来ますかと言うと、また彼女は怯えた目をした。

「大丈夫、僕は何もしない。あなたが休める場所もあると、なぜか必死で社員証を見せました。誰もが知っているような大手企業じゃないけど、彼女はそれを見ると腰を上げた。しんどそうだったから子どもを僕が抱き上げました。全力で守っていたんでしょうね、子どもはすやすや寝てました」

 いったい、どのくらいの間、彼女はそこにいたのだろう。そうも聞けず、ゆっくりと足を引きずりながら歩く彼女を見守りながら、彼は子どもを抱いてともに歩いた。

「あのとき、もちろん自分の子を思いましたよ。こんな小さかったんだろうな、顔も見たことがないなと。一方、この女性は自分の命を懸けて子どもを守った。たぶん、真知もそうやって生き抜いたんだろうと」

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