“自治体病院9割赤字”で“関東近郊”の「小児科医・産婦人科医」不足が危険水準に 「このままでは病院がなくなるのでは」という声も
このままでは病院がなくなるのでは……
このように、人件費をはじめとした支出増や補助金の終了などによる収入減によって自治体病院は過去最悪の赤字率を叩き出しています。ただ、自治体病院の赤字体質そのものは何も今に始まったものではありません。2019年度(コロナ前)でも約63%の公立病院が経常赤字でした。多くの公立病院が慢性的に赤字経営を続けてきたことからも、構造的な問題といわざるを得ません。今回の86%という数字は、この長年の赤字体質にコロナ補助金の終了と物価高騰が重なった結果といえます。
「自治体病院」と聞くと多くの人は地方にある病院のことを想像するかと思いますが、実際には地方部にも大都市にもあります。赤字幅にしても地方ばかりが厳しいかと思いきや、2024年の都立病院の医業赤字は680億円に上っています。
地域にかかわらず赤字が常態化している背景にあるのは、自治体病院が不採算な分野を受け入れていることです。例えば、感染症指定医療機関、災害拠点病院、救命救急センターなどの多くは自治体病院が担っています。ただ、全国自治体病院機構の調査によると、これらの病院の経常損失による赤字割合は、感染症指定医療機関は94%、災害拠点病院は94%、救命救急センターは93%と極めて高い割合です。
このような専門的な病院では設備費用などの支出もかさみますが患者さんはいつでもいるわけではない。民間病院であれば不採算分野を持ち続けていれば倒産してしまうため維持は難しい。不採算だけどいざというときに無いと困る、という分野を自治体病院が担っていることが赤字体質の原因の1つといえます。
首都圏郊外のある自治体病院の関係者によれば、今年度の決算見込みでも赤字は数億円規模に達する見通しで、職員のあいだでは「このままでは病院がなくなるのでは」と不安の声が上がっているそうです。
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