“母は社長愛人だったの…”妻の悲痛な告白にも「ふふふ」と笑う42歳夫 それでも学んだ「これが愛かも」
紗絵さんもまた、異性への“恨み”が…
近くのファミレスに行って話を聞いた。紗絵さんの心の中には男性に対する根深い恨みがあったようだ。
「あんな偉そうなことを言ってるけど、うちの母は自分が勤めていた会社の社長の愛人だったの。父親は私が小学生になったころも、たまに来ていた。でもあるとき母がわけのわからないことでごねてから、社長の足が遠のいてね。ある日、正妻がうちに来たのよ、手切れ金をもって。そのときから母は、男というものはろくでもないものだ、憎むべき存在だということを私に吹き込み続けた。私はその社長にかわいがってもらった記憶もないし、邪魔だ、あっちに行ってろと邪険にされるのが常だった。母とふたりで寝室にこもると、母の泣き声が聞こえてくる。今思えばあえぎ声だったんだけどね。母をいじめていると思っていた。あのころ男性への恨みが体に染みついてしまったのかも」
それを聞いた徹治さんは
そんなことを紗絵さんは問わず語りに話した。紗絵さんの目には「男は敵だ」と書いてあるような気がした、それが上の子にも伝わっているのだと直感でわかった、と徹治さんは言う。
「僕、そのときふふふと笑い出してしまったんですよ。男を憎む紗絵と、女嫌いの僕とがいい夫婦になれるはずがないと思った。紗絵にもそう説明しました。お互いに親のことまでは話したことがなかったから、話して気楽になった半面、これは理解し合えるという問題ではなく、お互いの存在がすでに子どもたちには悪影響なのではないかと思ってしまって。紗絵は、他の男性と関係をもっているのは事実だけど単なるセフレだからと釈明しました。普通は怒るのかもしれないけど、僕は『わかった』と言った。何がわかったんだかよくわからないんですが、セフレがいることで責めるのも違うかなと思ったんですよね」
「僕は少し目覚めました」
おそらく一般的な考え方や倫理観とは違うだろうが、恬淡とした物言い、子どものころからの境遇などを鑑みると、彼が妻の不倫で感情を乱されるとは思えなかった。かといって、この状況をなんとかしようとも思っていないのだろう。
「ただ、それによって僕は少し目覚めました。考えてみれば、娘ふたりも男を憎むようになる可能性が高いんですよね、今の環境だと。特定の誰かにひどいことをされたからその人を憎むならまだ話はわかるけど、異性全部を憎むのはもったいないというか。自分の娘の世話をしているうちに、少しだけ愛することがわかるようになってきていたんです。小さくてかわいい。しかも抱いていて、もし手を離したら、その子の命は危うくなる。そういう存在を大事に思うのが愛の基本なのかもしれないと。妻は大人だし、そういう意味での愛情はないけど、大事にしたいとは思っているんですよ。妻は男を恨んでいるから、離婚後はその鬱憤を晴らすかのように年上の男性を誘って関係をもって、相手が自分を好きになっていると確信を得たら別れることを繰り返していたようです。それでももちろん憂さ晴らしにはならなかった。僕との結婚でも、過去と未来がつながるような希望をもてなかった。だから気持ちを安定させるためにセフレを作ったと」
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