『虎に翼』で注目された「女性と法曹」…判事の女性比率が過去最高となった“奥の院”最高裁の人事のポイントとは
女性の社会進出が叫ばれるようになって久しいが、それでも我が国の民間企業における女性役員の比率は諸外国に比べて低いとされる。今夏、最高裁の人事で新たに女性判事が就任したことが話題を呼んでいる。今後も女性判事が増えていくのならば、司法府の最高機関の人事はどのように動いていくのか。史上初の女性長官が誕生する可能性はあるのか。日本社会を揺るがす注目裁判の判決にも影響が出てくるという、その人事の焦点は――。【田山雄介/司法ジャーナリスト】
前東大法学部学部長の沖野眞已(まさみ)氏が、7月24日付で最高裁判事に就任した。我が国の最高審級である最高裁の裁判官は、トップである長官と14人の判事の計15人で構成されている。沖野氏の就任で15人中4人が女性となり、女性比率は過去最高となった。こうなると、がぜん注目されるのが、初の女性トップの誕生だ。現在、法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)の組織のうち、検事総長、日本弁護士連合会(日弁連)会長はともに女性。昨年放送されたNHK連続テレビ小説『虎に翼』の影響もあり、「女性と法曹」に改めて注目が集まっているが、司法界でも裁判所、特に最高裁は「奥の院」と揶揄されるほど独特の世界。「女性長官」の誕生は、そう簡単なものではなさそうだ。
法律や命令が憲法に違反していないかの最終判断を下す最高裁は、三つの小法廷と一つの大法廷で構成されている。15人の最高裁裁判官は、長官も含めて全員が第1小法廷(通称・1小)、第2小法廷(同・2小)、第3小法廷(同・3小)のいずれかに所属している。ちなみに、第1~第3と順番がついているものの序列などは意味しておらず、三つの小法廷は並列の関係にある。これに対し、大法廷は長官を裁判長とする15人全員の合議体だ。過去の最高裁判例が変更される可能性がある事件や、違憲判断が出る可能性の高い事件など、いわゆる重要事件を審理する。
ちなみに現在の最高裁裁判官のメンバーは次の通りだ。(敬称略)
【第1小法廷】安浪亮介、岡正晶、堺徹、宮川美津子、中村愼
【第2小法廷】今崎幸彦(長官)、三浦守、岡村和美、尾島明、高須順一
【第3小法廷】林道晴、渡邉惠理子、石兼公博、平木正洋、沖野眞已
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