『虎に翼』で注目された「女性と法曹」…判事の女性比率が過去最高となった“奥の院”最高裁の人事のポイントとは
「6:2:4:2:1」
最高裁の裁判官になる人物は、裁判所法で「識見が高く、法律の素養がある40歳以上の者」と定められている。いわゆる「職業裁判官」でなくてもなれるが、実は出身分野別に「枠」が割り当てられている。その比率は「裁判官6、検察官2、弁護士4、行政官2、学者1」。これは長年、ほぼ変わっていない。
現メンバーを区分すると、裁判官出身は長官の今崎氏を筆頭に安浪氏、尾島氏、中村氏、林氏、平木氏。検察官出身は三浦氏と堺氏。弁護士出身は岡氏と宮川氏、高須氏、渡邉氏。消費者庁長官などを務めた岡村氏と元外交官の石兼氏が行政官出身、東大法学部の学部長だった沖野氏が学者出身。まさに「6:2:4:2:1」となる。
法律では、最高裁長官については「内閣の指名に基づき天皇が任命する」、最高裁判事は「内閣が任命する」としか任命方法を定めておらず、あくまで慣習でそうなっている。
このほど就任した沖野氏は、史上10人目の女性最高裁判事となる。“第1号”は1994年。元労働省(現厚生労働省)の官僚だった高橋久子氏が、初の女性最高裁判事に抜擢された。時の政権は非自民連立の細川護熙政権。「女性登用をアピールする『肝入り』だったといわれています」(政界関係者)。
その後、元社会保険庁長官の横尾和子氏、元労働省官僚の桜井龍子氏、慶大大学院教授だった岡部喜代子氏、弁護士の鬼丸かおる氏、同じく弁護士の宮崎裕子氏がそれぞれ最高裁判事に。そして現在の岡村氏、渡邉氏、宮川氏、今回の沖野氏と続く。
こうやって振り返ってみると、裁判の世界でも着実に女性進出が進んでいるようにみえる。しかし、近い将来、女性が最高裁長官になる確率は、現状では極めて低いといえる。
その最大の理由は、「裁判官出身者が長官になる」という慣習が固定化されていることだ。現任の第21代長官である今崎氏は、「出世ポスト」といわれる最高裁事務総長や東京高裁長官を経て最高裁判事、長官と上り詰めた、いわば保守本流。20代長官の戸倉三郎氏(長官在任期間2022年6月~24年8月)も、同じく最高裁事務総長―東京高裁長官を経験しており、こうした裁判エリートが長官になるケースが、大半を占めている。では、裁判官出身以外の長官はといえば、検察官出身で第8代長官の岡原昌男氏(同1977年8月~79年3月)や、弁護士出身で第7代長官の藤林益三氏(同76年5月~77年8月)までさかのぼらなくてはならない。
また、さきほど述べたように、これまで誕生した女性判事は、いずれも弁護士、行政官、学者の出身者。裁判官、検察官出身の女性最高裁判事は、これまで一人もいないのだ。
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有料記事「女性初の長官誕生なるか、注目される二つの裁判の行方は――司法府の最高機関・最高裁『人事』の焦点」では、奥の院とされる最高裁人事と今後の注目裁判の判決の行方について詳報している。



