気を遣うのは“食事”“恋愛”そして“排泄介助”…「介護職員」が明かす過酷すぎる現場の実態

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労働環境改善に必要なこと

 これほど過酷な労働環境にもかかわらず、介護職員たちの賃金は平均よりも少ない。厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和6年)によると平均賃金は30.2万円。年々賃上げが行われているものの、労働者全体の平均賃金33.0万円より低いのが現状だ。

 人手不足が深刻化しているのに、いつまでも賃金が上がらないのは、現場がリスペクトされていない証左だろう。人手不足解消、ひいては彼らの労働環境を改善するためにも、まずはその環境に見合う賃金の引き上げだ。

 そして、紹介してきたような様々なハラスメントに対する職員のケアも重要だろう。

 既述の通り、介護職はハラスメントを受けやすい職業ではあるが、それは決して「仕方がない」と受け止めたり諦めたりするものではない。

 そのためにも、ハラスメントを受けた職員が、ひとり「自分の問題」として抱え込まず、しっかりと会社や上司に報告・相談し、出来事を「現場事」とできる環境が何よりも大事になる。

「人手不足なうえ、こうして精神的にも体力的にも過酷な仕事ですから、ロボットの開発や導入が積極的に検討される業務ですが、人生終盤に機械に世話される高齢者は果たして幸せなのだろうか。自分が年を取った時、機械に世話されたいか――。この仕事をしているとそんなことを思うんです」

橋本愛喜(はしもと・あいき)
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許を取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働問題、災害対策、文化差異、ジェンダー、差別などに関する社会問題を中心に執筆中。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)、『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(KADOKAWA)

デイリー新潮編集部

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