気を遣うのは“食事”“恋愛”そして“排泄介助”…「介護職員」が明かす過酷すぎる現場の実態
入所で認知症が進行する?
実は、そんな介護施設への入所によって、ある現象が懸念されることがある。
「認知症が進行する恐れ」だ。
時折、利用者の家族から「入所した途端に認知症が進行した」という声を聞くことがあるという。
しかし、これは何も「入院が原因で急に認知症を発病する」というわけではない。住み慣れていた自分の家から離れることによる大きな環境変化等によって、心身に大きなストレスがかかることで、ゆっくり進みつつあった認知症の病理が急激に加速することによると考えられているのだ。
こうしたストレスや不安の解消に有効なのが、施設内で行われる「レクリエーション」だ。
レクリエーションは、心身機能の向上や他者との交流を楽しむ目的で行われるゲームやクイズのこと。介護職員は、入所者の身体状況、認知機能に合わせつつ、皆が飽きないようなものを常に仕込んでおく必要があるのだという。
「このレクリエーションは施設利用者にとってはかなり大事なもの。なかには『生きがい』とする人までいます」
実際、デイサービスではあるものの、カジノのようなレクリエーションを取り入れ、リハビリのような単調な時間にしないよう工夫している施設まであるのだ。
利用者同士の恋愛
当然、このレクリエーションは、施設利用者同士の交流の場となり、施設内での生活を円滑する大切な機会にもなる。居室が相部屋の老人ホームの場合であっても男女は別の部屋になることが一般的だが、こうしたリビングでのレクリエーションや食堂での食事などは、男女関係なく皆が集うのだ。
そうなると起こり得るのが「利用者同士の恋愛」だ。
「ご夫婦で入所される方もいらっしゃいますが、おひとりで入所されるケースが大半です。パートナーがいらっしゃらない利用者さん同士の場合なら、彼らの恋愛を職員が止める理由も権利もありませんから」
これは利用者の施設内生活にとっても悪いことではないという。
「恋愛をすることで『生きる活力』が湧くんだと思います。認知症の症状が改善したり、一緒にリハビリを頑張ることで身体機能が向上するケースもあるようです」
そのため、職員や家族も入籍・相続など互いの家族間に影響が出ない限りは温かく見守ることが多いのだそうだ。ただし、「状況の把握は必要」だという。
「三角関係やストーカー行為に発展してしまうケースもあるからです。老人ホーム内は比較的自由に行き来でき、利用者同士の生活距離も近い。そのため、恋愛感情から直接的な嫌がらせになることも少なくありません。大人の恋愛なので口を挟むことはしませんが、やはり見守りは必要かなと思います」
こうしたトラブル防止の観点から、なかには「恋愛禁止」の施設もあるのだという。
「大人同士なので基本的には本人や家族で対応してほしいですが、起きている場所が施設内である以上、何かあればスタッフが対応するしかない。人のケンカやトラブルの処理ほどしんどいものはありません」
[3/4ページ]

