気を遣うのは“食事”“恋愛”そして“排泄介助”…「介護職員」が明かす過酷すぎる現場の実態
食事の苦労
カスハラや苦情が出やすい施設内でのイベントに「食事」がある。
所内の食事は高齢者が安全かつ健康に食べられるように、薄味でやわらかく作られている。そのため、野菜もごはんも歯ごたえがないと感じる人が少なくない。
「家族が施設にいらした時などに『ここの施設の食事はまずくて食べられない』『嫌がらせのためにまずい食事を出している』などと不満をもらし、それが家族からのクレームになることがある」
この食事だが、不満が出るのは実は利用者だけではない。そこで働く職員からも「つらい」という声が出るのだ。
その理由は「検食」だ。
「検食」とは、介護施設で働く職員が交代で利用者に提供される食事を食べること。実際に職員がその日利用者に出されるメニューをそのまま食すことで、異常がないかを確認する業務だ。
しかし、介護は言わずもがな、スタミナのいる仕事だ。高齢者向けの食事では当然、十分なエネルギーを得られない。そのため、検食をしても別に弁当を用意する人も少なくないのだが、実はこの検食は、現場によって給与から「食事代」として天引きされるケースがあり、2回分の食費がかかることになるのだ。そのため、
「介護士の給料は高くない。経済的にもかなり苦しい」と漏らす人も少なくない。
排泄介助を嫌う利用者
もう1つ、職員にとって神経を使うのが「排泄介助」……といっても、「人の排泄なんて介助をしたくない」、という気持ちからくるものではないという。
我々は普段、1日に何度もトイレに行く。当然、介助が必要な高齢者も、何度も排泄をする。この排泄介助は、ケアの中でも基本中の基本であり、職員の間では毎日の「当然の業務」として受け入れているという。
しかし、利用者のなかにはおむつを拒否したり、当てたおむつを外したり、汚した下着やおむつを隠したり、さらには暴言を吐きながら介護者にあたったりすることがあるという。
「入所間もない人や、排泄介助が必要になったばかりの利用者さんのなかには、失禁してしまった現実を受け入れられず、その恥ずかしさややるせなさで他人に当たってしまう人がいるんです」
一方、こうした利用者の羞恥心は、カスハラとは反対に排泄をできるだけ減らそうと、膀胱炎になってしまったり、食事や水分を取らなくなってしまったりするなど、彼らのQOLを下げてしまう原因になることもあるという。
「なので、利用者の方に排泄介助を受けいれてもらうために気を使っています」
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