ピーター・フォークの実娘は私立探偵だった…「刑事コロンボ」が100倍楽しめる豆知識、「昭和天皇も大ファン」の真相は?
放送開始から50年以上が経つ今も、再放送が繰り返されているドラマがある。それが「刑事コロンボ」だ(現在はNHKBSや同4Kで不定期放送)。
1992年にTBSがおこなった調査によれば、「視聴者の心に残った、好きなテレビ番組」アンケートで2位という栄誉に輝いている。しかも同じNHKの「紅白歌合戦」を5位に抑えての名聞であった(1位は「3年B組金八先生」、3位は同率で「太陽にほえろ!」、「男女7人夏物語」)(※1)。
実際のドラマを観たことはなくとも、「コロンボ」と聞いただけで、あの、ヨレヨレのレインコートや、「ウチのカミさんが……」という口癖を思い出す方も多いだろう。「刑事コロンボ」は現在、配信(Hulu)や廉価版DVDでも楽しめる。イッキ見も可能な夏休みを前に、同作が一層楽しめる豆知識を公開したい。
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大人気も、NHKには苦情殺到!?
「刑事コロンボ」は、アメリカのNBCで1968年、日本では72年からNHKで放映が開始され、すぐに人気コンテンツになった。ストーリーの最初で犯人が罪を犯し、それがわかった上で話が進んで行く“倒叙もの”の推理ドラマで、犯人を富豪や弁護士や医者など、得てして“ハイソ”な人物に設定したことも、成功の要因となった。それを風采の上がらぬ刑事コロンボがじわじわ追い詰めて逮捕する姿が、なんとも痛快かつ、愉快、爽快だったわけである。
ところが、NHKには折に触れ、投書が殺到したという。中には〈コロンボの放送のお陰で、ウチの亭主も、夜、家にいることが多くなりました〉という好意的なものもあったが、そのほとんどが、NHKへの苦情だった。内容は好評なのに何故かというと、「刑事コロンボ」は土曜日、もしくは日曜日の夜8時からというのが、基本的な放送枠だった。なので、プロ野球のナイター中継の雨傘番組となることがあったのである。〈雨天中止の場合、『刑事コロンボ』放映〉とのラテ欄に怒ったファンたちが、不平、不満を投書したのだった。
〈「土曜の夜は雨になれ!雨なら野球放送がなくなり、コロンボが見られる」――そんなファンが激増している〉(「週刊平凡」1974年3月22日号)
〈「土曜日のナイター中継をすぐに中止して。たかがプロ野球のために、私の愛する人を消すとはなにごとですか」(19歳OLの投書。「ヤングレディ」。1974年6月10日号)
〈プロ野球ファンには殺されそうだが、土曜の夜はてるてる坊主をサカサにつって、全国的なる雨を祈りたい心境だ〉(作家・麻生千晶。「週刊朝日」1974年6月14日号)……。
さて、このコロンボ、実は役職は「刑事」ではない。ロサンゼルス市警殺人課所属で、NHKの吹き替えでは「警部」となっていた。ところが、実はこれも違っており、原語では、こう呼ばれていた。「lieutenant(警部補)」。これでは日本での訳出が違うことになるが、当時の放送関係者によれば、「警部補」とするとややこしくなるため、シンプルに「警部」に翻案したのだという。とはいえ、実際にアメリカの警察で「警部」というと、相当な管理職であり、一線の捜査の現場に出ることは少ないという。
この件を小粋に利用したのが脚本家の三谷幸喜氏。大のコロンボ好きとして知られ、オマージュさながら、人気ドラマ「古畑任三郎」を生み出した脚本家だが、その初期のタイトルは、ラテ欄含め、以下のようになっていた。
「警部補・古畑任三郎」(※第2シーズンより、名前のみのタイトルに)。
三谷氏の茶目っ気たっぷりの本作への敬意と言えるだろう。
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