SNSとスマホで差別的話題が堂々と…トランプを生んだ「新右翼」白人至上主義“オルトライト”が台頭した背景とは
グローバリズムに強烈に逆行する「ナトコン」という思想
同じく「第3のニューライト」の一端を担う「ナトコン」とはどのような一派なのだろうか。
「ナトコンは『ナショナルコンサバティブ』を短くしたもので、日本語では『国民保守主義』と呼ばれることもあります。その名の通り、国民国家をもう一度再評価しようというのが彼らの立場です」(井上氏)
冷戦後の世界ではグローバル化が進み、国家を超えて人と人とが繋がっていこう、という機運が高まりを見せたはずだが――。
「でも、それは果たして私たちにとって幸せなことだったのか、というのがナトコンの人たちの立場です。グローバル化が地域コミュニティの繋がりを崩壊させ、個人はむき出しのグローバルマーケットの暴力にさらされてきたじゃないか、と。伝統や文化、それらのよりどころとなる国家という単位を、私たちのこの政治の営みの中心にもう1回据えようじゃないかという主張です」(同)
ナトコンを率いる代表的な人物に、政治理論家のヨラム・ハゾニーがいる。
「ハゾニーはイスラエルのシオニストで、彼はまさにイスラエルのような国家を大切に思っているわけです。ヨーロッパではEUという国家を超えた存在がある。けれどもかつてユダヤ人たちがなぜ、ナチスドイツの下で悲惨な目にあったのかと言えば、自分たちが国家を持っていなかったからじゃないか、と。自分たちの政治を誰からも脅かされないようにするためには、国家というものは不可欠なのだ、とシオニストである彼は考えるわけです」(同)
ガザでの戦争においても、シオニズムを掲げるハゾニーの一派は、自分たちの正しさを決して疑わないところがあるが、その背景にはこうした国家観が深く関係していると言えるだろう。
「彼が重視する国民国家の基盤は、彼にとってはもちろんユダヤ教となるわけですが、西洋であればキリスト教となります。文化、歴史、特に宗教がナトコンの人たちにとって拠り所であり、回帰すべき、保守すべき、その基盤になっているのです。伝統的なものを保存する役割を果たす家族も、その中に含まれるでしょう」(同)
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この記事の後編では引き続き、アメリカのニューライトのうち「テック右派」と呼ばれる人々について、神戸大学大学院国際文化学研究科教授の井上弘貴氏の解説をお届けする。AIを用いるデータ解析企業として急成長するパランティア社の創業者であるピーター・ティールや、テスラCEOのイーロン・マスクを例に、アメリカにおける「テクノロジーと宗教」の特殊な関係性に迫る。
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