SNSとスマホで差別的話題が堂々と…トランプを生んだ「新右翼」白人至上主義“オルトライト”が台頭した背景とは
ロイター通信と調査会社のイプソスが7月末に実施した世論調査によれば、トランプ米大統領の支持率は40%に低下し、2期目としては最低水準に落ち込んだ。注目は支持政党別の支持率で、共和党支持者の支持率が83%なのに対し、民主党支持者ではわずか3%と、トランプ大統領を巡るアメリカ社会の“分断”を鮮明に映し出す結果となっている。ただ、アメリカ政治思想史に詳しい神戸大学大学院国際文化学研究科教授の井上弘貴氏は、「第2次トランプ政権の支持基盤となっている保守層は、かつての共和党政権を支えた層とは明らかな違いがある」と指摘する。
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【写真を見る】白人至上主義的な政治グループ「オルトライト」を率いるスペンサー氏
※この記事は新潮社のYouTubeチャンネル「イノベーション読書」より<オルトライト、ナトコン、テック右派、極右……トランプを生んだアメリカの「シン・保守」入門 神戸大・井上弘貴教授に聞く>の内容の一部を編集したものです。
アメリカ保守層内部で起きていた3つの「変革の波」
アメリカの保守層の“主流派”に対し、新たに台頭する保守層を“ニューライト”(新しい右派)と呼ぶ。アメリカ政治思想史に詳しい神戸大学大学院国際文化学研究科教授の井上弘貴氏は、この“ニューライト”を3つの段階に分けて捉えることができるという。
「第1のニューライトは、1950年代から1960年代にかけて生まれました。ローズベルト大統領のニューディール政策への反対から始まり、リベラルな大きな国家への対抗軸として定義された保守主義です」(井上氏)
それに次いで現れる「第2のニューライト」は、より文化的な色合いを濃くする。
「第2のニューライトは、1960年代から1970年代の社会変動、特に公民権運動やフェミニズム、反戦運動、カウンターカルチャーといったリベラルな価値観の拡大に対する反動として生まれた保守主義です」(同)
都市のエリート層に対抗する形で、地方や白人中間層を基盤とする草の根保守運動が力を持ち、「伝統的家族観」や「道徳秩序の回復」を訴えるとともに、宗教心の衰退や人工妊娠中絶への反対を強く掲げたことは、記憶に新しい。
では、トランプ政権下で注目される「第3のニューライト」とは――?
「2017年からの第1次トランプ政権、その後のバイデン政権、そして現在の第2次トランプ政権において力を増した第3のニューライトは、従来の保守主義とは一線を画すものです。これまでのアメリカの本質とも言える、自由と民主主義の理念が融合したリベラル・デモクラシーそのものを批判し、国家や宗教、そしてテクノロジーを新たな価値軸として据え直す思想として広がりを見せています」(同)
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