SNSとスマホで差別的話題が堂々と…トランプを生んだ「新右翼」白人至上主義“オルトライト”が台頭した背景とは

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白人至上主義的かつ男性中心主義的な「オルトライト」

 複雑なのは、この「第3のニューライト」と呼ばれる新たな保守層が「オルトライト」や「ナトコン」、「テック右派」に代表されるいくつものグループに細分化されることだ。

 どれも日本人には馴染みの薄い単語だが、どのような思想を標榜しているのだろうか。

「オルトライトは、白人至上主義的かつ、男性中心主義的な傾向を持つグループで、差別的な側面が色濃い人たちとも言い換えられます。これまでこうしたグループは右派の中でも“異端”として脇に追いやられてきたのですが、ネット社会の発展とともに勢力を拡大することになります」(井上氏)

 90年代から始まったインターネットの普及が、2000年代にさらに加速し、個人がネット空間に繋がることが当たり前になった。さらに2010年代にはSNSとスマホが登場し、これまで“表の場”では語れなかった差別的な話題が、堂々とやり取りされるようになった。

「カジュアルに差別的な事柄が共有できる環境が整った中で、白人至上主義的なメンタリティを持った人たちがネットを中心に緩やかな思想運動を生み出していった。その総合的な集合体がオルトライトというわけです」(同)

 ただ、当時のオルトライトの行動範囲は匿名のネット空間に限られていたため、影響力は限定的だった。そうした状況を変えたきっかけのひとつが2006年に起きた「デューク大学ラクロス部事件」の虚偽証言だという。

「アメリカ南部の名門大学・デューク大学で起きた事件です。大学のラクロス部の男子学生たちが、他大学の黒人の女子学生を踊り子として雇用したのですが、その女子生徒がレイプされたと告発したことで3人の逮捕者が出ました。ところがのちにその告発が虚偽であったことが判明し、教職員をはじめそれまで男子学生を非難していた人々が一転して批判の矢面に立たされます。そうした批判の急先鋒に立ったのが、オルトライトの指導者になったリチャード・B・スペンサーです」(同)

 背景には、白人男性は非常に差別的で、黒人女性を虐げているといったリベラル側のステレオタイプに対するカウンターがある。

「白人男性のなかにある差別的な傾向というのは、ある種正当な主張かもしれませんが、事件の嘘が判明したことをきっかけに、リベラリズムの姿勢を逆に糾弾する運動として支持を集めたということです」

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