【終戦80年】の「8月15日」に観てほしい珠玉の名画…4Kで復活した伝説の「反戦映画」に「4時間37分」の大作ドキュメンタリーも

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 本年は終戦80年の節目である。それだけに、この夏は、戦争を題材にした映画が多い。主な作品と、その見どころをご紹介しよう。

35年越しの企画 「木の上の軍隊」

 まず、すでに公開中の「木の上の軍隊」(平一紘監督)。太平洋戦争で激戦地となった沖縄・伊江島で、終戦を知らずにガジュマルの木の上で、2年間、隠れて生き通した2人の日本兵の姿を描く異色作だ。

「この実話は、40年近く前から、井上ひさしさんが戯曲化するべく、取り組んできた、“執念の企画”だったのです」

 以下、ベテランの演劇・映画ジャーナリスト氏に解説してもらおう。

「井上さんは、〈ヒロシマ〉〈ナガサキ〉〈オキナワ〉の3つの土地を舞台にした戯曲を3部作のように構想していました。このうち〈ヒロシマ〉は、『父と暮せば』として1994年に初演されました。原爆で生き残った娘を、幽霊となった父が励ます2人芝居で、いまでも毎年のように上演されている名作舞台です」

 そして〈オキナワ〉を舞台に構想されたのが、この伊江島の実話だった。

「井上さんは、資料を集め、具体的な執筆準備に入っていました。そして、1990年4月、井上さんが主催する劇団こまつ座の第20回公演として、演出・千田是也、出演・すまけい、市川勇の布陣で、紀伊國屋ホールでの初演が発表されたのです」

 しかし……“遅筆堂”の異名をとる井上ひさしだけあり、結局、台本が出来上がらず、公演は中止となる。

「その後、今度は、こまつ座とホリプロの提携公演、演出・栗山民也、主演・藤原竜也で、紀伊國屋サザンシアターで2010年7月の初演が決定、二度目の準備に入ります。ところが、すでに井上さんは肺がんを患っており、4月に逝去。またも公演中止となってしまうのです」

 この時点で、もう「木の上の軍隊」が日の目を見ることはないだろうと誰もが思っていた。

「それを、井上さんの三女で、こまつ座社長をつとめる井上麻矢さんが、なんとか形にしたいと奔走し、劇団モダンスイマーズの蓬莱竜太に、新たに台本を依頼します。蓬莱は、井上さんが残していた、たった2行のメモ〈沖縄戦、伊江島、ガジュマルの木の上で終戦を知らずに2年間を過ごした日本兵二人の話〉と、大量の資料をもとに新たに台本を書き上げます。そして2013年4月、あらためて藤原竜也、山西惇、片平なぎさによって、ようやく初演にこぎつけるのです」

 その時点で、当初の初演予定(1990年)から23年が経過していた。そして終戦80年、この2025年夏に、今度は映画となったというわけだ。まさに35年越しの企画なのである。

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