校閲の仕事はAIに任せれば十分か? 最も得意そうなファクトチェックも「まだまだ」に思えてしまう理由とは
こんにちは。新潮社校閲部の甲谷です。
おなじみ、クイズからいきましょう。
日本の中で「面積の大きい市区町村」第1位~第3位はどこでしょうか? 都道府県ではなく市区町村です。もちろん、インターネットで調べても構いませんが、その際、どのサイトを使うのが適切かも考えながら、調べてみてください(令和7年4月1日時点のデータとします)。
スマートフォンでも調べられます。制限時間は3分です。では、どうぞ!
【回答】皆さん、分かりましたか?クイズの答え合わせをしてみましょう
校閲はAIに駆逐される?
さて、昨今、AI(人工知能)の進歩のスピードはすさまじく、将来的には多くの仕事がAIに取って代わられる、とも言われていますよね。
では、「校閲」という仕事はAIで代替可能でしょうか?
「そんなことあり得ない! 校閲は人間がやらないと絶対に成立しない」と、考える方もいれば、「校閲って、AIがいかにも得意そうな分野だなあ」「数年後には全部AIになっているだろうな……」なんて考える方もいらっしゃるでしょう。実際、この連載を読んでくださっている皆様からの感想の中には、「校閲はAIにやってもらえば良いのでは?」という意見が結構、多いです。
そこで、今回から数回にわたって「校閲とAIの関係」について考えてみようと思います。
以前この連載で、校閲の仕事は大まかに「調べ物(ファクトチェック)」「素読み」「合わせ」の3つに分類できる、と書きましたが、この“校閲3要素”に沿って検証します。最初に、「ファクトチェック」についての検証を2回に分けて進めていきます。
ChatGPTにファクトチェックをお願いしてみた
まず、次の文章をご覧ください(肩書は2025年7月1日時点)。
石波茂首相は、1957年2月4日生まれ。出身は鳥取県で、2024年9月17日の自民党総裁選で第28代自民党総裁に選出された。
この文章を人間が校閲する場合、どのようにファクトチェックすべきでしょうか。
校閲の世界では、ファクトチェックはまず「一次情報に当たれ」、という大原則があります。上記の文章の場合、まずは「首相官邸」のホームページや石破氏自身のホームページなど、公式に発表されている情報を探します。
すると、生年月日や出身県の記載はありましたが、総裁選に関する記載が見当たらなかったので、「自民党」のホームページに移動して確認します。
上記の文章では、総裁選の日付が「9月17日」ではなく「9月27日」が正しいとわかりましたので、校閲疑問を出します。
また、冒頭の「石破」が「石波」になっていますね。こういった単純なところにも要注意です(連載の最初のほうでご紹介した「漢字三文字の真ん中は見落としやすい」という法則にも合致)。
この文章のファクトチェックにかかる時間は、人間の校閲者で2~3分ほどでしょうか。
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