天才ジュニア・バイカーギャング・刑務所…天と地を体験した31歳ゴルファー「才能の活かし方がわからなかった」 世界ランク1215位から掴んだ全英OP切符

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才能の活かし方がわからなかった

 オーストラリアツアーやPGAツアー・オーストラレイジアの出場権(一部は条件付きシード権)も獲得。

 その延長線上で、今年のニュージーランドオープンの出場資格を得たピークは、最後まで執拗な粘りを見せた。そして見事、勝利を挙げて、全英オープンへの切符を手に入れた。

「優勝したら、彼女にプロポーズしようと決めていた」

 優勝賞金を得たことで、「少し高い指輪を買うことができた」と照れ笑いしたピークは、しみじみと、こんな言葉を続けた。

「自分には、きっとゴルフの才能があると思っていたけど、長い間、その活かし方がわからなかったし、知らなかった」

 いろいろな経験を経た今は、その活かし方が少しわかってきたというピークは、社会における生き方やコミュニケーションの取り方も「少しずつわかってきた」という。

わずかな光が大きな助けになる

 たとえギャングの仲間入りをしても、刑務所行きになっても、ホームコースのレイクランドCCが常に自分の味方であり続け、再び受け入れてくれたことは「何より、ありがたいことだった」。

 そのレイクランドCCの古いメンバーの1人が病気で余命が長くないと知らされたピークは、ニュージーランドオープンの18番の優勝フラッグを車に積んで3時間ハンドルを握り、自身の復活記念となるその大切な優勝フラッグをプレゼントしたのだそうだ。

「どんなときも、誰にとっても、小さな望み、わずかな光が大きな助けになる」

 刑務所暮らしを経た元ギャングは、以前よりずっと強く優しくなって、今年の全英オープンに初出場する。

 ロイヤル・ポートラッシュでティオフするピークに小さな望みを託す人々が、世界のあちらこちらから拍手を送るのではないだろうか。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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