天才ジュニア・バイカーギャング・刑務所…天と地を体験した31歳ゴルファー「才能の活かし方がわからなかった」 世界ランク1215位から掴んだ全英OP切符
バイクギャング集団の世界へ
そして、ピークは17歳でオーストラリアオープンにアマチュアとして出場するなど、プロの世界にも挑み始めた。
しかし、ホームコースで大人たちを相手にゴルフをする日々の中で、自ずと大人びていったピークは学校で浮いた存在となり、いじめのターゲットにされたこともあった。
ゴルフ場でも学校でも、どこにいても年齢差やさまざまなギャップに悩み、居場所がないように感じ始めたピークは、いつしかバイクギャングの集まりに顔を出すようになり、夜な夜なバイクを乗り回した。
お互いを「メイト(友達)」「ブラザー(兄弟)」と呼び合うその世界は、当時のピークにとっては「ようやく得た自分の居場所だと感じられた」という。
そうした日々の中でも、ゴルフはなんとか続けていた。2012年にはプロ転向し、母国のミニツアーなどに出場し始めた。
元ジュニアの警察官に落胆されて
しかし、幼いころから天才と呼ばれてきたピークは、ロクに練習もせずに試合に出ることを繰り返し、成績は下降する一方だった。やがて、ゴルフに嫌気さえ感じるようになり、工事現場で肉体労働に従事しながら日銭を稼ぎ、その合間にバイクギャングの仲間たちとバイクを乗り回した。
そして2014年11月。ピークが仲間たちとバーベキューをしていた際、近隣の住人と口論になり、殴る蹴るの激しいケンカへ発展。ふと気づけば、ピークも暴力を振るっていたという。
数週間後。ゴルフ場で練習していたピークは、そこへ乗り込んできた地元警察に逮捕、拘束された。拘置所の警察官の中には、かつて天才ジュニアと呼ばれたピークと競い合ったことがあった元ジュニアゴルファーがいたそうで、彼はピークに冷たい視線を向けながら「オマエは何をやっているんだ……」と落胆していたそうだ。
しかし、一番落胆したのは、言うまでもなく、ピーク自身だった。暴行罪で禁固5年の判決を受けたピークは「オレの人生は、どうしてこんなことになってしまったのか。もう終わりだ」と頭を抱え、刑務所に入った最初の夜は「ほとんど眠ることができなかった」。
[2/4ページ]