天才ジュニア・バイカーギャング・刑務所…天と地を体験した31歳ゴルファー「才能の活かし方がわからなかった」 世界ランク1215位から掴んだ全英OP切符

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2014年に暴行罪で逮捕

 男子ゴルフの今季最後のメジャー大会、全英オープンは、7月17日から20日の4日間、北アイルランドのロイヤル・ポートラッシュで開催される。

 世界屈指のリンクスコースで腕を競い合うのは、世界のトッププレーヤーたちだが、そこに5年間の刑務所生活を経験した32歳のオーストラリア出身選手、ライアン・ピークが挑もうとしており、異色の存在として注目を集めている。

 ピークは、幼少時代はオーストラリアのゴルフ界では誰もが知るほどの有名ジュニアだったが、2012年にプロ転向後、2014年には暴行罪で逮捕。起訴されて有罪判決を受け、5年間の刑務所生活を送った。

「オレの人生は、どうしてこんなことになってしまったのか。もう終わりだ」

 刑務所で過ごす最初の夜はほとんど眠れず、肩を落としたピーク。だが、刑期を終えて2019年5月に出所するやいなやゴルフ界に舞い戻り、次々に好成績を挙げていった。

世界ランキング1215位で掴んだ全英切符

 そして、今年の2月末から3月にかけて、全英オープン予選会を兼ねて開催されたニュージーランドオープンで見事、優勝。ロイヤル・ポートラッシュへのたった1枚の切符を自力で掴み取った。

 最終日終盤は、日本の比嘉一貴を含む4人でのプレーオフに突入する可能性が濃厚だった。だが、ピークは17番でバーディーを奪うと、18番では3メートルのパーパットをしっかり沈め、1打差で勝利を決めた。

 レフティ選手による同大会優勝は、1973年に同大会4勝目を挙げたボブ・チャールズ以来となったが、世界ランキング1215位で臨んだピークが勝利したことは、レフティ優勝以上の驚きだった。

 かつての天才ジュニアが刑務所生活を経て、再びゴルフ界へ復帰し、ついに自身初めてのメジャー大会出場へ。波乱万丈すぎるピークの半生は、一体、どんな歩みだったのだろうか。

オーストラリアを代表するトップジュニアに

 米ゴルフダイジェスト誌によると、ピークの父親はブロック職人からゴルフ場のグリーンキーパーに転職したほどの大のゴルフ好きで、祖父もゴルフ好きだったそうだ。

「僕もゴルフをしてみたい」

 幼いピークからそうせがまれた父親と祖父は、試しにクラブを握らせた。するとピークはいきなり美しいスイングでボールをしっかり捉えて飛ばし、周囲から「すごい」「天才少年だ」と絶賛された。

 10歳で自分専用のクラブを持ち、個人レッスンも受け始めると、わずか2、3年のうちに、ピークのベッドルームはトロフィーでいっぱいになったという。12歳のときには、ホームコースのレイクランドGCのクラブマッチで「大人のメンバーを8&7で下した」という逸話もある。

 同じオーストラリアのジュニア界には、後に全英オープン覇者となったキャメロン・スミスもいた。ピークとスミスはオーストラリアを代表するトップジュニアと言われていた。

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