高畑勲と宮崎駿が競い合った「お化けと墓」 映画「火垂るの墓」ついに配信開始 1988年波乱の公開前を振り返る

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 戦後80年を迎える今夏、7月15日より、アニメ映画「火垂るの墓」(高畑勲監督)がNetflixで配信されることとなった。スタジオジブリ作品としては国内で初の配信作となる。1988年の劇場公開から37年を経て、なぜ今、配信となったのか――。映画化の経緯や高畑監督の仕事に対する取り組み方、同時上映された「となりのトトロ」との関係など、当時製作に携わった担当者に聞いた。(前後編の前編)

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「火垂るの墓」は作家の野坂昭如氏(1930~2015)が1967年に発表した同名小説が原作で、太平洋戦争末期に疎開した神戸での体験をモチーフに、終戦後に餓死してしまう兄妹を描いたアニメ映画だ。「もう二度と見たくなくなるほど悲惨だが、二度と忘れられない傑作だ」と評したメディアもある。妹・節子が大事に食べたサクマ式ドロップスの缶を見ただけで目が潤むという人も少なくないだろう。その「火垂るの墓」が配信により、いつでも見られるようになる。

「実は『火垂るの墓』が配信されていなかったのは日本だけでした。昨年9月よりNetflixが日本以外の190カ国・地域で独占配信を始めました。それが好評とのことで、国内での配信のお誘いを受けたのがきっかけでした」

 と話すのは、当時、製作委員会に新潮社側のメンバーとして参加した柴田静也氏である。「となりのトトロ」や「風の谷のナウシカ」、「天空の城ラピュタ」など、スタジオジブリ作品はいずれも国内での配信はまだない。なぜなのだろう。

「他のジブリ作品についてはわかりませんが、『火垂るの墓』に関しては海外における配信、劇場上映、ビデオグラム化などの権利が、ここ十数年の間に様々に分散されてしまっていたため、著作権を持つ新潮社が、それをまた一つにまとめるのに時間がかかったこと。そして、かつて『火垂るの墓』は数年に一度のペースで、『金曜ロードショー』(日本テレビ)で放送されていましたが、近年では2018年に高畑勲監督(1935〜2018)の追悼として放送されたのを最後に放送されていませんでした」(柴田氏・以下同)

 今年は8月15日、終戦の日に「金曜ロードショー」でも放送されるという。

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