校閲者から見た「優秀な編集者」の条件とは…ギリギリまで待たされるけど憎めない「不思議な魅力」を持つ編集者も

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 皆様こんにちは。新潮社校閲部の甲谷です。

 今回もクイズからです。

 天気を表現するときに使う「雨模様」という言葉。「文化庁 国語に関する世論調査」の令和4年度版で、この語句についての調査が行われています。

 では、同調査で「雨模様」の「辞書等での本来の意味」と記されているものは、次のうちどちらでしょうか?

A……雨が降りそうな様子
B……小雨が降ったりやんだりしている様子

「優秀な編集者」とは

 さて、今日はいつもとは別の角度からお話をさせていただこうと思います。

 ズバリ、「校閲者から見た、優秀な編集者とは?」

 ……いや、失礼にもほどがあるだろと、自分でも思います。そもそも、編集者がいないと校閲という仕事は成り立ちませんし、編集という仕事の激務ぶりを見るにつけ、本当に尊敬してもしきれない日々です。

 とはいえ、いつも近くで仕事をしているわけですから、編集者に対して何も思うことがない、というのも不自然でしょう。というわけで、校閲者から見た「優秀な編集者」の話に少しばかりお付き合いいただけたら幸いです(以下、あくまで個人の意見です)。

入稿が早くて……な編集者

 まず、優秀な編集者として真っ先に思いつくのは「入稿が早い編集者」です。

 入稿というのは、作家さんからいただいた原稿に見出しやタイトルなどをつけて整理し、文字数や行数など、組版上の適切な指定をしたうえで印刷所に原稿を組版してもらうことです。編集者の入稿が早ければ、校閲だけでなく営業や装幀、印刷など、本にかかわるすべての人の作業に余裕ができますから、「良い本ができる可能性が高まる」と言っても過言ではありません。

 例えば書籍校閲の場合、入稿が早ければ早いほどスケジュールの調整がつきやすくなります。たとえば書籍の内容によっては、「法律に強い校閲者に見て欲しい」とか「中国語ができる人に……」などのオーダーがある場合、入稿がギリギリだと、法律や中国語うんぬんの前に、そもそもスケジュール的に作業可能な校閲者が誰もいない、という事態が訪れかねません。

 出版業に限らないことかもしれませんが、やはり、「仕事が早い編集者」というのは本当にありがたいです。

 しかし、理想としてはもう一つ足して「入稿が早く、かつ正確な」編集者でしょう。

 というのも、「入稿が早いのは良いが、原稿があまりに粗く、整理しきれていない」ケースも見受けられるからです。

 ゲラ上で修正が多くなると、初校から校了まですべての段階において、校閲のみならず組版担当者や編集者自身の作業量も増えて、ミスが起こりやすくなります。

 入稿前にある程度、編集者と著者の間で内容を整理していただき、ゲラがエンピツや朱字だらけにならないようにしていただいたほうが、結果的に編集者の作業量も減るわけですが……これを読んでいる編集者の方、「理想を語るな」と怒らないでくださいね。

 一方で、「日程的にギリギリだけど、刊行されたら間違いなく話題になる原稿」を持ってくる編集者も個人的には憎めません。周りを「ノセる」のが上手な編集者というのは確実にいて、それはパーソナルな魅力とか話術とか、人間的な部分によるものかと思います。私自身はそのような能力を全く持ち合わせていないので、そういった「不思議な魅力」を持っている編集者のことを率直に尊敬します。

 いや、でもやっぱり入稿は遅いより早いほうが助かるんですけども……。

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