印刷所から「1行多いんですけど」と言われてヒヤヒヤ…週刊誌の校閲を悩ませる「行数調整」という難題
こんにちは。新潮社校閲部の甲谷です。
今回もクイズからいきますね。
【回答】皆さん、分かりましたか?クイズの答え合わせをしてみましょう
以前にも取り上げた「熟字訓」の問題です。以下の漢字ですが、もっとも一般的な読みはそれぞれ何でしょうか?
1.彷徨う 2.蔓延る 3.微睡む 4.容易い
「行をみっちりにする作業」とは?
さて今回は、「行数調整」のお話です。
そもそも行数調整とはなんぞや? 校閲が行数調整? などなど、皆さんの頭の中は「?」で埋め尽くされていることでしょう。
紙の週刊誌では、どのページも、一面が文字でびっしりと埋め尽くされていますよね。ある意味、当然のことではあるのですが、実は「最後の行まで、余白がなく」記事が載っていることをご存じでしょうか。
新聞でもそうですが、最後に1行か2行空いて終わっている、ということはほぼありません(記事の体裁をとっている広告などは別です)。新聞や週刊誌では、この「行をぴったり、みっちりにして世に送り出す」作業というものを、必ず行っているのです。私が現在担当している「週刊新潮」の場合、最終的な行数計算の作業は校閲がしています。
では、他の媒体では行数調整は行われているのでしょうか。例えば、一般的な書籍では基本的に細かい行数調整がありません。ということは、章ごとの最後のページで、最終行までみっちり埋まっていなくても良いことになります。
一方、月刊誌などでは行数調整しているところも多いようです。またネット記事は多くの場合、行数調整の必要性がありません。このように、ページに文字をぎっしり埋めるか埋めないかというのは、媒体によって千差万別なのです。
内容を変える調整と、変えない調整
では、行数調整を週刊誌の現場ではどのように行っているのか。大きく2つに分類できます。
A……内容を増やしたり、減らしたりして行数を調整する(=内容を変える調整)
B……1ページあたりの行数や字間、約物(句読点など)を調整する(=内容を変えない調整)
現場では、その時の状況に応じて、A、Bをうまく使い分けながら誌面を完成させていきます。
例えば、週刊誌において、350行でぴったり3ページとなるような記事があったとします。その場合、もちろん記者(デスク)は完成稿が350行になるように記事を組み立てていくのですが、内容修正、識者のコメントチェック、追加取材、校閲疑問……などによって、入稿後も内容は変わっていきます。
そのため、初校で350行ぴったりになっていても、その後の修正によってどうしても数行増えてしまったり、逆に減ってしまったり、ということが常に起こります。しかし、世に出す(=印刷)までには再び、350行ぴったりにしなければならないのです。
内容が固まった後の最終的な行数調整方法の一例としては、記者の方に「内容面で」行数を増やしたり減らしたりできないか模索する(すなわち、上記のAの調整ができないか考えていただく)わけですが、実は「全体が350行になればいい」だけではありません。
というのも、週刊誌の多くの記事には、「中見出し」と呼ばれる記事内のサブ見出しのようなものが数か所あります。そうなると、中見出しごとの行数も調整しなければならないという制約が生まれます。つまり、一つの記事の中だけで何か所も、行数調整の必要な箇所があるということです。
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