「初恋の人妻」に会いたくて…探偵を雇って調べると そして始まった53歳夫の“思い出の後始末”
不完全燃焼に終わった初恋 への執着
双子の女の子たちが高校を卒業したのが2年前。長男はすでに大学生になっており、双子もそれぞれ希望の大学へと進んだ。まだまだお金はかかるけど、子どもたちがみんな自分の好きな道を見つけたのはすごいことだよねと、夫婦は互いを褒め合ったという。
「私が働いていたために、ひょっとしたら寂しい思いをさせたのかなと思うこともあったと麻奈美はしみじみ言っていました。でも子どもたちに聞いたら『ううん、ママが働いているのはかっこいいと思ってた』『働いていてもママの愛情は感じてたよ』と言ってくれて。反抗的な態度をとることもあったけど、高校を卒業するころはすっかり子どもたちは大人になっていました」
これからはまたふたりでいる時間が増えるかもしれないねと話しながら、靖文さんは「早希さんはどうしているだろう」と思った。それまでも結婚したとき、子どもが生まれたとき、何かにつけて早希さんに心を寄せてはきた。それほど早希さんへの思いが強かったのか、あるいは不完全燃焼のまま終わった「大人になってからの初恋」に執着があったのか、自分の気持ちは判然としていない。
「今度こそ彼女を探そう」
あれから30年以上が過ぎていた。
「今度こそ彼女をちゃんと探そうと思ったんです。子どもたちも自立していき、僕の責任はほぼ果たした。もちろん、彼女が見つかったとしても、今さらどうこうなろうとは考えていない。ただ会いたかった。だから探したかったんです」
探そうと決めると、さらに早希さんへの思いは募っていった。当時の日記を繰りながら、あの団地へと足を向けた。だが団地はすでになくなっていたし、近所の商店を訪ねてみたが、当時のことを知っている人ももういなかった。
「僕は彼女のことを何も知らなかった。知っているのは彼女の名前、それも結婚してからの名前だけ。かろうじて夫の名前もなんとなくは記憶にあった。夫の勤務先もうろ覚えでしたが、たぶんあの会社だろうと推測はできました」
もちろん、ネットを駆使してみたが、それらしい人は見つけられない。探偵事務所に頼むしかないかもしれない。そう思ったが、なかなか勇気が出なかった。
「そんなときたまたま同僚と話していたら、その彼のいとこが探偵事務所を経営しているとわかった。実は……と話しました。僕が彼女に恋心をもっていたということは話さず、アルバイトで教材を売っていて非常に世話になった、食べられないときに食べさせてくれた恩人だと言って。人探しはいとこの得意なジャンルだと思うと言って、彼は連絡先を教えてくれました。『オレからも一報入れておくから』と。探偵さんに連絡してみると、すでに情報は伝わっていたので、早速会いに行きました。探偵さんは『いとこであっても守秘義務はありますから、口外しません』と言ってくれた」
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