保守系スローガンだけではない 「参政党」が既存政党の“脅威”に変貌した理由 オーガニック、格差是正で“左”にもウイングを広げ
候補者の素顔にシフト
「赤坂街録~ホンネファイル~」。参政党の選挙候補者や幹部らを紹介するシリーズ動画のタイトルだ。いくつかを視聴すると、各人が声だけの質問に答える形で、自身について語ってゆく場面が少なくないことに気が付く。木漏れ陽が射す小さな緑地の一角。登場人物はカメラ目線ではない上、政策にも触れるが、これまでの歩みや仕事、普段の生活についての話題も多い。リラックスムードで笑いも交え、政治家の動画の一般的イメージとは、かなり趣を異にする。
政党におけるSNS活用と言えば、これも国民民主の取り組みの早さが知られた。玉木代表自らが積極的に動画出演し、立て板に水で政策を解説する。ユーザーとの対話、論戦も厭わない姿勢が注目度を上げた。こまめな発信は「ネットどぶ板」なる造語を生んだほどだ。
参政党はこれら先行した取り組みの、いわば進化系とも言えそうだ。激しさであれ、穏やかさであれ、候補者の素顔を押し出すことにシフトしている印象を受けた。時には迷いや悩みもうかがわれ、等身大の姿を映し出す。それらは、視聴者に自身を重ね合わせる余地を生じさせる。もちろん、強い政治的主張に特化した動画は多くある。
同党の都議選当選者3人のX(旧ツイッター)フォロワー数は、6月27日時点で、多い順に1万8000人、1万2000人、8000人である。
自民党票に影響か
さて、参院選の動向である。比例代表では、各種世論調査で参政党を投票先と答えるウエイトが上がっている。3年前の参院選で神谷宗幣代表が獲得した1議席を優に超え、3、4議席以上に届く可能性が出てきた。また、選挙区でも、都議選時の勢いを都内全域で維持していると仮定すれば、東京では議席獲得が視野に入る。このほか、神谷代表のお膝元である大阪など、改選数の多い都市部での戦いが注目される。
この影響が及ぶのは、まずは保守政党の巨艦であり、老舗の自民党だろう。同じ保守層で有権者の選択肢が広がり、票を奪い合う相手が増える。24年衆院選の比例で、参政党は187万票を得ており、同じく保守の新興勢力である日本保守党の獲得票と合わせると301万票に上った。このうちの一定割合は、もともと自民票だったと見る向きは多い。
参政党は参院選で、全ての選挙区で候補者擁立を発表している。このため、仮に自民候補が優位な選挙区であっても、保守票の争奪戦が起き、票を削られるリスクがある。そうなると、立憲民主党などの候補にプラスに働くことがあり得る。
石破政権は衆院で与党過半数を失っている。参院でも自公で過半数を割る事態になれば、より不安定になるのは自明である。場合によっては政権を明け渡す可能性もゼロではない。こうなると1~2議席の重みも格段に違ってくる。このため、自民党執行部は首脳陣を含め、早い段階から参政党の影響を警戒していた。
石破茂首相(党総裁)は6月28日の党全国幹事長会議で、都議選で新しい政党が支持を集めた要因を分析する考えを示した。同時に「47都道府県それぞれを本当に知り尽くしているのは自民党だ」として、物価高対策や農政などを列挙し、長年培ってきた政策、国家運営力を総動員してそれらに対峙する意向を強調している。
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