「中国共産党」幹部の息子が、ロンドン留学中に「婦女暴行10名」で終身刑に 親のスネかじり月78万円のマンションで違法薬物も使用 「これまでの性犯罪者で最も凶悪な1人」

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 イギリス屈指の名門大学の博士課程で学ぶ中国人留学生、鄒鎮豪(すう・ちんごう、28)が6月19日、イギリスと中国で計10人の女性を酒や薬物で酩酊させレイプした罪などで終身刑を言い渡された。ロンドン警視庁には24人の被害者が名乗りを上げており、押収したビデオや出会い系サイトの通信記録などから、鄒は60人以上の女性を標的にしていたとみられる。彼は自ら「1年間で100人の女と寝た」などと自慢していたほどだ。鄒は中国広東省の大企業役員で中国共産党の幹部でもある父親から多額の仕送りを受け、家賃月4000ポンド(約78万円)の高級マンション39階の部屋に女性を連れ込んでわいせつな行為を繰り返しており、ロンドン警視庁は彼を「これまでの性加害者のなかでも最も凶悪な1人」とみなしている。
【相馬勝/ジャーナリスト】

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捜査のきっかけは

 当局が鄒鎮豪を捜査し始めたきっかけは、ロンドン在住の中国人女性が2023年5月18日の夜、「マンションでのパーティーの後、レイプされた」と訴え出たことからだった。しかし、彼女の英語が稚拙であったことなどから、警察では事件の詳しい状況が把握できず、彼女はやむなく帰宅し、中国語のSNSに、被害の一部始終を告白した。

 それは、彼女が中国人の若い男とパブで知り合い、その後、マンションに連れていかれ、ワインやウォッカ、ウイスキーを飲まされ、酩酊して意識が朦朧としたところを寝室に連れ込まれた。彼女は必死になって、「家に帰して!」と頼んだが、暴力を振るわれるなどし、レイプされた。彼女は翌朝、男の隙を見て、逃げ帰った――というものだ。

違法薬物も

 これを読んだロンドン在住の女性が「私も被害者だ」とSNSに書き込むと、ほかの女性からも同様の投稿が相次いだことから、SNS上で警察批判が強まった。

 このため、ロンドン警視庁は最初の訴えから半年後の23年11月、ようやく捜査を開始し、鄒を事情聴取するとともに、自宅マンションを家宅捜索したところ、パソコンなどのなかに、6.5テラバイトのデータが保存されており、そのうち1270本の合計1660時間以上の録画データを発見。そのうち58本に鄒が女性をレイプする場面が撮影されていた。

 また、多量のSNSのメッセージも押収。そこには被害女性とのやり取りが記録されていた。このほか鄒のマンションからはケタミンやエクスタシーなどの薬物や、ストロー、ガラス瓶に入った大量の違法薬物なども発見された。鄒は女性に酒とともに薬物を飲ませて、意識を失わせるなどして犯行に及んだとみられる。

ほかに50人の女性が被害に

 当局は容疑を固めた結果、24年1月、最初に名乗り出た中国人女性を含む10人をレイプした容疑などで鄒を逮捕。映像にはロンドンでの犯行のほか、中国での犯行場面も記録されており、中国公安省(日本の警察庁に相当)の支援を受けて、鄒の逮捕にこぎつけたという。

 鄒はロンドンの裁判所で、2019年から23年までの約4年間で、ロンドンで3人の女性、中国で7人の女性に対する11件(同じ女性が2件)のレイプをした罪に加え、性犯罪目的で工業用溶剤であるブタンジオールを所持した罪3件と、過激な性的画像を所持した罪10件、不法監禁1件、のぞき3件の容疑でそれぞれ訴追された。

 事件を担当したロンドン警視庁のケビン・サウスワース警視長は「彼がほかにも50人にもおよぶ女性をはずかしめたことを示唆する証拠がある」と語っている。

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