「銀河鉄道999」の大宇宙は“小学生向けの水彩絵の具”で描かれていた…過去最大級の「松本零士展」5つの見どころを元担当編集者が解説

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(5)「零士メーター」が光っている理由

 松本零士といえば、「零士メーター」です。大量の円形メーターと、そのなかに見える(意外とアナログ感あふれる)針は、海外のファンの間でも「Leiji Meter」として知られる、まさに松本零士の代名詞です。

 今回も、そんな「零士メーター」が登場する原画が、たくさん出展されています。見ていると、(特に男子は)心の奥底の“メカ魂”のようなものがよみがえり、どこか、なつかしいような、それでいて奮い立つような、不思議な感慨に襲われるはずです。

 なぜ、そんな思いにとらわれるのでしょうか。「零士メーター」の原画を、あらためてよく見てください。大量の円形メーターのひとつひとつが、光を放っています。「模型の時代」のトビラ原画は2色原稿ですが、円形メーターが「緑」色で描かれ、これも、ボーッと光を放っているように描かれています。「ガンフロンティア」の銃も光っています。

 メーターのみならず、松本作品には、このように「光」を放っているメカがたくさん登場します。まるで、光らせることで、機械も“生きている”かのようです。メカだけでなく、出展作品「銀河鉄道999/蛍の街」では、人間発光体が哀しい光を放っています。〈戦場まんがシリーズ〉の名作「スタンレーの魔女」では、被弾してボロボロになった戦闘機の機体の穴から噴き出す燃料(?)が、まるで、血か涙を流しているようです。

 このように、機械を生身の人間のように描くことで、本来は無味乾燥なメカやメーターが、生き生きと、わたしたちに迫ってくるのです。これこそが、松本作品が、世代を超えて多くのひとたちに愛される理由のひとつだと思います。今回の〈松本零士展 創作の旅路〉は、そういう魅力がよくわかる、貴重な展覧会です。

 また、この展覧会にあわせて、「芸術新潮」7月号では〈松本零士の大宇宙と幻想美女〉と題して、68頁におよぶ大特集を組んでいます。展覧会とは、またちがった角度から、松本零士ワールドの魅力に迫っているので、あわせてお楽しみください。
(一部敬称略)

森重良太(もりしげ・りょうた)
1958年生まれ。週刊新潮記者を皮切りに、新潮社で42年間、編集者をつとめ、現在はフリー。音楽ライター・富樫鉄火としても活躍中。

デイリー新潮編集部

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