小4児童に「体罰」「差別」「死に方教えたろうか」…告発された「教師による史上最悪のいじめ」は「モンスターペアレント」の“でっちあげ”だった 【映画公開】福岡「殺人教師」冤罪事件とは

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5つの刑

 事件を振り返ってみる。

 この川上譲教諭(仮名)から被害を受けたとされるのは4年生の児童浅川裕二(仮名)である。裕二の母親浅川和子(仮名)は、教諭が家庭訪問の最中に信じがたいことを口走ったと主張した。教諭は、和子の祖父がアメリカ人であることを聞き出すや、「血が混じっているんですね」と言い出し、猛烈なアメリカ批判を展開。「日本は島国で純粋な血だったのに、外国人が入って来て穢れた血が混ざってきた」と発言したという。

 この家庭訪問の翌日から、教諭による凄惨ないじめが始まったという。下校前、教諭は裕二に「十数える間に片付けろ」といい、10秒間でランドセルに学習道具を入れることを命じた。それができないと、「アンパンマン」(両頬を指でつかんで引っ張る)、「ミッキーマウス」(両耳をつかんで引っ張る)、「ピノキオ」(鼻をつまんで振り回す)などの「5つの刑」を裕二に加えていた。

 この「10カウント」と「5つの刑」は毎日、「帰りの会」の時に他の児童の前で行われ、裕二は大量の鼻血を出したり、耳が切れて化膿するなどした。また教諭は、「穢れた血を恨め」と暴言を吐き、クラス全員でのゲーム中にも、「アメリカ人やけん、鬼」などとひどい差別発言を繰り返していた。

 さらに教諭は裕二に対し、「自殺強要発言」までしていたという。これらのいじめにより、裕二は深刻なPTSDを発症したというのだ。

すべて事実無根

 この両親の訴えに対して、教諭は、すべて事実無根であると反論した。騒ぎの発端である家庭訪問にしても、裕二の漢字や割り算のテスト結果、裕二が属しているサッカークラブでのことなど、担任教師が家庭訪問で話すごく普通のことを伝えただけである。

 和子の祖父がアメリカ人であることも、和子の方から切り出したことで、アメリカ生活が長かったことなどを長時間しゃべり続けたという。「血が混じっている」という言葉にしても、「ああ、アメリカの方と血が混じっているから、(裕二君は)ハーフ的な顔立ちをしているんですね」と返しただけであり、「血が穢れている」とは断じて言っていないという。

 教諭は、その後の教室でのひどい体罰や大量の鼻血が出るような怪我、「アメリカ人やけん、鬼」などの差別発言も一切を否定する。

「10カウント」については、裕二は帰り支度が遅く他の児童にまで迷惑をかけていたので、「はい、10数えるからランドセルを取って来て」と指示しただけのことである。アンパンマンやミッキーマウスについては、体罰にならない上手な叱り方として先輩教師から教わったもので、ほんのちょっと頬や耳や鼻に触る程度のことだ。「5つの刑」という言葉は使ったことさえない。自殺強要発言については、西日本新聞を読んで初めて知ったほどである。

マスコミのバッシング報道

 教諭は当初、浅川側の抗議に対し、「体罰やいじめはやっていない」と強く否定していた。ところが、浅川夫婦の剣幕に恐れをなした校長と教頭は、事実関係の詳しい調査もせず、川上教諭に謝罪を強要したという。

 だが浅川夫婦はこの謝罪にも納得せず、「担任を替えろ」と強硬に主張。困り果てた校長は川上教諭を担任から外し、市の教育センターに預けてしまった。そしてこの頃、朝日新聞の取材を皮切りに、マスコミの激しいバッシング報道が始まったのである。

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