「中国は日本のレーダーの電子情報を調べている」 中国製ドローンの“侵入”の狙いとは 

国際 中国

  • ブックマーク

「レーダーの電子情報を調べている」

 かように自衛隊にコストを強要するほかにもドローンには目的があると、元空将で麗澤大学特別教授の織田邦男氏は語る。

「台湾や日本の近海を飛び相手の出方を探る目的もあると思いますが、何より各種レーダーの電子情報を調べているのでしょう。その情報があれば中国は有事の際、妨害する電波を発信し、相手の警戒監視網をかく乱できます。レーダーサイトは都度換装されるため、そのたび情報収集に来ているのです」

 飛来する中国機に、日本はどう対応すればいいのか。

「本来なら宮古島のすぐ西側にある下地島から離発着して対応できれば、尖閣諸島などにも近く一番良い。同島には滑走路もあります。ただ、沖縄県と国の協定で民間利用以外は原則できない。中国が台湾有事に向けて本格的な準備を進めているいま、利用の方法について改めて議論すべきだと思います」(同)

「中国に口実を与えかねない」

 金沢工業大学大学院の伊藤俊幸教授は、海上保安庁の強化も必要だと語る。

「中国のドローンには軍所有のもののほかに、日本でいう海上保安庁にあたる海警局のものがあります。こういったドローンにもスクランブル発進を行うと、むしろ中国に“そちらが自衛隊を出すならこちらも軍を出す”と口実を与えかねない。中国側もそれを見越して、海警局のヘリを日本海などで飛ばすことが多い。自衛隊の主任務はあくまで有事における武力行使ですから、海警局の機体には海上保安庁が対応できるようにすべきです」

 ただし、中国機全体に対するスクランブル発進の回数は昨年度で464回であり、ドローンより有人機の方が圧倒的に多い。中国軍の総兵力は自衛隊の約9倍、200万人前後とされ、新味のあるドローンに目を奪われては本質を見誤るだろう。

「ドローンの性能を向上させたいという思惑もあるのでは」

 先の杉浦氏も言う。

「中国は昨年来、『九天』というドローンを押し出しています。大きな本体から多数の小型機を発進させ連携攻撃ができる世界初の技術を搭載と喧伝していますが、技術的なハードルは高くどこまで実用的かは未知数です。中国は、ウクライナ戦争で実戦にドローンを投入しデータを積み上げている各国に対し、後れを取っている可能性があります。日本近海でドローンの飛来が増えているのは、中国製ドローンの性能を向上させたいという思惑もあるのです」

 目下試験中の空母「福健」に搭載予定の電磁カタパルトに、最新ドローン。これらの“アピール”を実戦で目にすることになる前に、日本も国防を強化するほかあるまい。

 前編【「日本全土をいつでも空襲できる状態になりかねない」 中国の海軍の実力は「侮れない」 現役自衛官が解説】では、今回中国機が海自機に異常接近した軍事的な側面について、専門家の分析を紹介している。

週刊新潮 2025年6月26日号掲載

特集「日本にちょっかいを出す 目障りな中国軍」より

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。