自分は性に薄いと思っていたけれど…50歳既婚男性が「好き」と気づいた 意外な相手の正体は
【前後編の後編/前編を読む】「小さい頃から性に興味がない」50歳夫 レスすぎる夫婦生活に妻が「外注」を宣言するまで
加瀬浩毅さん(50歳・仮名=以下同)は「僕は“不倫”をしているとは思っていませんが、それ以上につらい思いをしている」と今の心境を語る。結婚して20年になる妻の美緒さんとは学生時代からの知り合いで、ひとり娘にも恵まれた。ただ、夫婦の営みはそのとき一度きり。小さい頃から性への関心が薄く、美緒さんと出会ってからも、誘いに応じられなかった。そんな夫婦生活に嫌気がさした妻は「セックスを外注する」と言い出し、浩毅さんもそれを受け入れた。
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【前編を読む】「小さい頃から性に興味がない」50歳夫 レスすぎる夫婦生活に妻が「外注」を宣言するまで
妻がセックスを「外注する」と宣言、それをどうやって実行に移しているのか、浩毅さんは知らなかった。もちろん知ろうとも思わなかった。
「ただそれ以来、家庭内は非常に円満になりました。妻と僕は娘を真ん中にして手を繋ぎ、いろいろなところへ遊びに行った。週末は娘が行きたいというところにはどこにでも連れていきました。帰りは外食することもあったけど、たいてい娘が『パパのオムライスが食べたい』というから、帰宅してからせっせと作りました」
美緒さんはそんな彼に「ありがとう」と言って、後片付けを担ってくれた。理想的に家庭が回っている。そんな実感があった。
「仮面夫婦」と妻が言い出し…
娘が小学校に入ると、行事にはほとんどふたりで参加し、「いつも一緒なのね、仲がいいわね」と周りからおしどり夫婦ぶりをからかわれたりもした。幸せだった、と浩毅さんは言う。
「いつだったか、美緒が『私たちって仮面夫婦なのかな』と言ったことがあるんです。僕はびっくりして、そんなふうに考えたこともなかったと言いました。セックスが抜け落ちただけで仮面夫婦になるのと思わずつぶやいたら、『ねえ、そもそもあなたはどうしてそれほどセックスを嫌うの? しなかったら娘はいなかったんだよ、あなたがこんなに愛している娘は私たちがしたからできたんだよ』と美緒が言ったんです。そのときの美緒の顔が、なんとなく僕を憐れんでいるように見えて傷つきました。彼女が言っていることはもちろん正しい。だけど僕は、どうして自分がそうなのかということをあまり重視していなかった。性を拒否することで、美緒が苦しんでいるとは思っていなかった、というか、美緒が苦悩しているように見えなかったし……。自分が重視していないものに、人がどんなに価値があると言っても理解できないじゃないですか」
それでも不穏な空気にならないよう、「ごめんね」と謝った。美緒さんは「私こそごめん、あなたも苦しいのよね」と言った。いや、苦しくはないと言いそうになったが、そうか、ここは自分も苦しいんだというふりをしておいたほうがうまくいくんだと彼は悟ったという。
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