自分は性に薄いと思っていたけれど…50歳既婚男性が「好き」と気づいた 意外な相手の正体は

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妻が妙な目で僕を見て…

 彼には平常心で接するよう、心を強くもっているという。今のところ気づかれてはいないはずだと信じている。そしてもし妻が、自分の気持ちを知ったらどう言うだろうと考えることもある。

「以前、ニュースで同性結婚について報じられているとき、娘が『同性で結婚したっていいじゃない』と言ったんですよ。すると妻が『あのね、それを許したら社会の秩序がおかしくなるの』って。社会の秩序って何だ? それは個人の思いより優先されるべきものなのかと思わず言ってしまいました。妻が妙な目で一瞬、僕を見て、社会秩序があっての個人でしょとぶったぎったんですよ。娘は『変なの』と不満そうでした。僕も何か言いたかったけど言えなかった」

 夫婦という契約をしていながら、セックスを“外注”してきた妻は、社会の秩序を乱してはいないのか。彼はそういう妻を断罪する気はないが、世間一般から見たらどうなのか。彼の中にもやもやしたものが詰まっている。

 自分が同性を好きになるタイプなのだとわかれば、気持ちはまだすっきりする。それがわからないから困るし悩む。

「妻も更年期を迎えて、今は“外注”はしていないようですが、この先はまたわかりませんよね。僕はそれでもいいと思っているけど……。僕が彼に告白したら、僕の周りはどうなるんだろうと想像することはあります。でもいいことは何もないとわかっている。おっさんずラブというドラマや映画があったけど、ことはあんなふうにうまく楽しくいくわけじゃない。この先、どう生きていけばいいのか……」

 そうつぶやいて彼は「いくつになっても生きるって大変ですよね」と少しだけ笑みを浮かべた。

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 浩毅さんの悩みは尽きないが、自分も知らなかった自分を“発見”したことは確かなようだ。あとは、家庭と変わらずに向き合って行けるのかどうかにかかっているのかもしれない。妻が「外注」を宣言するに至った経緯は【記事前編】で紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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