自分は性に薄いと思っていたけれど…50歳既婚男性が「好き」と気づいた 意外な相手の正体は

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浩毅さんの胸を「チクチク」させた相手

 5年ほど前だった。彼のいる部署に中途入社の30歳男性が配属された。そつなく仕事をこなすタイプだったが、「もっとできるはずだ」と彼は思っていた。なにより素直で、誰からも好かれた。仕事には食らいついてくるところもある。彼は少しずつむずかしい仕事を任せ、アイデアを出させた。

「どんどん頭角を現して、あっという間にチームリーダーになりました。僕の右腕になってほしかったけど、むしろ彼は自ら上に立つほうが向いていた。そのころからかな、彼が他のスタッフと話しているのを見ると、なんだか胸がチクチクするようになったんですよ」

 彼とはふたりきりでよく飲みに行った。彼も浩毅さんには心を開いてくれたようで、生まれ育った家庭のことから、20代での恋愛のこと、しばらく独身でいいと思っていることなどをおもしろおかしく話してくれた。

「僕が持っていない彼の“屈託のなさ”みたいなものが羨ましかった。キラキラして見えました。若さへの嫉妬もあったと思う。気圧されるほど魅力をもっている彼が、『僕、浩毅さんを尊敬してます』なんて言ってくれる。そのたび僕はなぜかドギマギしてしまうんです」

抱く罪悪感

 今まで知らなかった感情が、浩毅さんの中でムクムクとわき起こってきた。これは何だろう、どうして彼を見ると動揺してしまうのだろうと考え続けて、とうとう彼はそれを「恋愛感情だ」と思うようになった。

「僕には恋愛感情も性的欲求も薄すぎるくらい薄いと実感していたけど、皆無ではなかったとわかりました。ただ、僕は彼が男だから好きというわけでもなくて、彼だから好きなんだと思う。好きというよりもっと高尚な思い。だから彼に対して性的欲求があるわけではないんです」

 それでもときおり、彼の顔を思い浮かべながら眠りにつくことがある。そんなときは彼と抱き合う夢を見る。彼を穢してしまったとハッと飛び起きてしまう。

「美緒とはベッドを並べて寝ているんですが、『大丈夫? うなされてたよ』と言われることも増えました。ちょっと最近、仕事が忙しくてと言い訳しましたが、美緒に対して罪悪感がある。そして不思議なことに、彼に対しても変な罪悪感があるんです。自分の欲望の道具にしているような……」

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