「お葬式のような顔をして過ごす学生も…」 日本人留学生にも影響 ハーバード大でいま何が起きているのか、同大の研究者が明かす
「お葬式のような顔をして過ごしている」
奨学金の問題も深刻だ。
「政権は転校しろなどと簡単に言いますが、ハーバードのように返済不要の奨学金がある大学は多くない。場合によっては本国に帰ることになる学生もいるでしょう。これから9月まで夏休みだというのに、彼らだけはお葬式のような顔をして過ごしています」(前出の日本人教員)
日本では前出の大谷氏が所属する岡山大学を含め、多数の大学がこうした留学生や研究者の受け入れを表明しており「支えられている実感があり励みになる」(大谷氏)というが、
「日本人留学生以外が来るかというと微妙です。アメリカと比べると日本での研究者の給料は安く、あえて選ぶ外国人は少ないと思います」(先の日本人教員)
“妥当性のあるところには責任を持って対応したい”
かように政権側は「金とヒト」を交渉カードに要求をのむよう迫っているわけだが、大学側も事態収束のため、一部に関しては譲歩を考えているという。
前出の日本人教員が語る。
「留学生の受け入れ認可停止を政権が発表したあと、ガーバー学長と話す機会がありました。いわく“トランプの主張は誇張されている。とはいえ一定の妥当性があるところには責任を持って対応したい”ということでした。確かにトランプ氏が主張する“反ユダヤ主義”について、大学も対応を考えてきたのです」
「ユダヤ系の学生が居心地の悪さを覚えたのは当然」
その例が4月29日に大学から発表された、ユダヤ系・イスラム系学生についての調査報告書だ。複数の学生が疎外感を感じたり、出自を隠すよう圧力を受けていたとして、学長は謝罪までしている。
「イスラエルとイスラム組織が戦闘を始めたおととし、学内は双方の支持者がデモを行い騒然としていました。その時に入り込んだ活動団体がイスラエルを批判する過激な内容の声明文を配り、何も考えず署名した学生が多数いました。それが大炎上して街宣車が来るなど騒ぎとなり、学内の対立が深まった。そんな中でユダヤ系の学生が居心地の悪さを覚えたのは、ある意味当然でしょう」(前出の日本人教員)
大学が政権の要求に一定の理解を示しているように映るのには、こんな事情もある。
「大学の関係病院の一つ、ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンターはその名の通りユダヤ人が設立者です。大学の大口寄付者にはユダヤ系の富豪も少なくないため、調査せずには大学も体面が保てません」(同)
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