「お葬式のような顔をして過ごす学生も…」 日本人留学生にも影響 ハーバード大でいま何が起きているのか、同大の研究者が明かす
【前後編の後編/前編からの続き】
数々の名士を送り出してきた名門・ハーバード大学がトランプ大統領(78)の圧力の前に危機に立たされている。日本では政権側の横暴ぶりが盛んに報じられているが、実際に同校で勤務する邦人たちはどう見ているのか。過熱する「大学vs.トランプ」の実情を探る。
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【写真を見る】学内は騒然… トランプ政権に抗議する学生がキャンパス内で行った集会
前編【「性的マイノリティーに関する研究費の支給が停止されたと聞いた」 ハーバード大の日本人研究者が明かす なぜトランプ大統領はハーバード大を目の敵にするのか】では、トランプ大統領の苛烈な要求内容について紹介するとともに、同大の日本人研究者による現地の声を報じた。
一方で、政権が発表した留学生の受け入れに必要な許可の停止は、当事者の留学生にとっては大問題だと、岡山大学呼吸器・乳腺内分泌外科からハーバード大学教育病院に研究員として派遣されている大谷悠介氏は語る。
「学生ビザ発給に必要な面接が停止しており、留学を予定する人々が渡米できない可能性があります。日本の大学に合格しながらハーバード大を選んだ学生が、ビザの都合で進学できなくなることもあり得る。すでに在籍している留学生や外国人研究者についても、大学側が提訴した裁判の結果によっては、政権いわく“転校か在留資格の喪失”を選ばなくてはいけなくなるため、慎重な行動が求められています」
研究者にとって、安心して長期間、研究に没頭できる環境は欠かせない。
「医学論文では、論文の筆頭著者を務めることがキャリアに直結します。研究の途中にビザの問題で帰国を余儀なくされれば、どれほど努力していても、ほとんどの場合は別の研究者が筆頭著者になるでしょう。そうなれば、家賃などの生活費も含めた高額な留学費用を投じた意味が薄れてしまうため、大きな不安を感じています」(同)
「中国人研究者を採用する予定だったのですが……」
ハーバード大学医学部教授の河合達郎氏も、ビザ停止の影響は大きいと嘆く。
「私の研究室では新しく中国人研究者を採用する予定だったのですが、政権は特に中国人のビザに対し制限を強めるとみられ、研究室に来てもらうのは難しそうです。国外から新任の研究者が来ない以上アメリカ人から採用するしかないのですが、彼らは7月の年度替わりで一斉にいなくなってしまう。これまでのように年度の区切りが違う外国人研究者で穴埋めすることができなくなります。それにアメリカ人研究者は医学部を卒業して2~3年の若い人が多く、仕事の上でも経験豊富な外国人研究者を雇えないのは痛手です」
さる日本人教員は留学生への影響に心を痛めている。
「アメリカでは、在学中に企業でインターンシップをする学生が少なくありません。その際に必要な就労許可もビザにひもづいているため、心配する声が聞かれます。また留学生が卒業後アメリカで就職する場合も、最初の1~2年は学生ビザのまま働くため、それにも影響が出る可能性がある」
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