「石破総理」は、60日で退陣した「羽田内閣」よりずっと恵まれている…当選14回「船田元」議員が語る“少数与党の心得”
「背に腹は代えられぬ」だった高校無償化
――では、うまくいったと言えるのは何か。
一応、日本維新の会との所得制限なき高校無償化の合意だろう。わが党には、かなり無理筋の内容だったが、国民民主の求めた年収の壁の件と比べると必要な財源がかなり少ない。年間6000億円などとされ、財源の面では乗れない話ではなかった。言い方が良くないかもしれないが「安くついた」わけだ。
ただ、私立高校にそれだけお金を出すと、学費の面で公立高と大きな差がなくなり、私立高に生徒が流れるとして公立高の存続を危ぶむ声がある。所得制限がなく「ばらまき」批判が出ていることも重々承知している。しかし、維新の賛成がなければ年度内の予算成立はなかった。「背に腹は代えられない」とするぎりぎりの判断で、方向性としては間違いとまでは言えないだろう。
故渡辺美智雄・元通産相の座右の銘
――石破政権は自民党内基盤が弱いとされる。
仮に、自公が衆院で多数を占めていれば、もう石破内閣は既に潰れていたかもしれない。少数与党に陥ったことが、党内基盤の弱い石破内閣を、逆に長生きさせている。
――理由を具体的に聞きたい。
噛み砕いて話すのは難しいが、24年の党総裁選で勝利した石破首相を支持したり、ブレーンと呼ばれたりする議員は、安倍政権時は非主流派とされてきた人だ。私も非主流だった。昨年の衆院選で自民党が敗北したのは政治不信の影響が大きく、その原因である政治資金不記載問題には、旧安倍派の国会議員の皆さんが多く関係していた。よって、石破内閣が少数与党に転落しても、旧安倍派の皆さんは批判しにくい立場にいる。このため石破内閣への非難はかなり抑えられることになった。
つまり、石破首相にとっては「こんなに苦労しているのは、旧安倍派の皆さんの政治資金問題があったからだ」ということになる。石破首相には気の毒な言い方で申し訳ないが、この状況があり、少数与党であることが、生きながらえる原動力になっているわけだ。私と同じ栃木県が地元で、中選挙区時代は同じ選挙区でもあった故渡辺美智雄・元通商産業相の座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。まさにその通りであり、何がどう作用するかは本当に分からない。
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